研究概要 |
本研究の主目的である「未治療前立腺癌患者を対象としたMRI・MRS測定」に関しては,80名が研究のボランティアとして参加した.手術を選択される症例が少なかったので,前立腺内が均一に励起できた29例で生検病理との対比を行った.MRSで得られたCC/Cは平均すると,辺縁域健常部で0.46,辺縁域癌部で2.08,移行域健常部で1.03,移行域癌部で2.67と癌のほうが健常に比して有意に高い値を呈した(移行域,辺縁域ともp=0.002).また,CC/Cと悪性度をあらわすGleason scoreとの相関係数を求めたところr=0.686とかなり強い相関を示した(p=0.002).一般に臨床で用いられているCC/Cは,高磁場環境でも充分に機能し,悪性度を予測する一つの指標になり得ると考えられた. また「密度行列法に基づくスペクトル推定法の開発」では,ファントムならびに健常ボランティア(5名)のデータに対して曲線がフィットでき,ヒト前立腺クエン酸の横緩和時間(T2)を求めることができた.T2値には個人差があり,5名のデータに対して87.2,264,197,26.3,147[ms](144.3±92.6[ms])であった.このようなヒト前立腺クエン酸のT2はこれまで求められた例がなく,摘出された検体を用いずに生体内に存在するあるがままの前立腺の代謝情報を,詳細に検討できる可能性が示唆された.「前立腺癌3次元表示ソフトの開発」でも,MRS情報を重畳表示した前立腺の3次元表示が可能となり,ROIの設定,ROI内での算出目標パラメータの選択,算出結果のマッピングにおける画像重畳の際の画像の透過度の調整などを,マウスの操作で行なえるように改良した.これにより,疾患の理解に有益な情報を提供すると考えられた.
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