看護系の社会人夜間大学院教育について、以下の2つの研究を実施した。 1.大学院教育を必須とする専門看護師教育への学習ニーズとエキスパートのイメージに関する調査 群馬県内48施設で勤務する3年以上の実務経験を有する看護職751名を対象に、専門看護師に対するニーズを把握する目的で、自己記述式質問票を配布し調査を行った。その結果、699名(回収率93.1%)から回答が得られた。専門看護師になりたい希望があるものは全体の42.5%であり、うち群馬大学に入学を希望するものは78.5%であった。専門看護師の希望分野は、がん看護が31.9%でもっとも高く、次いで地域看護、老年看護の順であった。専門看護師を希望しない理由は、「興味はあるが仕事の継続に支障をきたす心配がある」が49.3%、「入試に合格するか心配である」35.6%、「大学院での教育についていけるか不安である」34.6%であった。またエキスパートのイメージと専門看護師は必ずしも一致しなかった。以上より、大学院進学や専門看護師資格取得のニーズはあるが、学習継続への不安が高いことが明らかになった。 2.夜間大学院を終了した学生の学習上の克服課題に関する調査 看護系社会人大学院生の学習継続を支援するために、大学院修了生で仕事と学業を両立させた10名を対象に半構造的面接により、学習上の克服課題を調査した。面接データは質的内容分析によりカテゴリー化した。その結果、データは289抽出され、25サブカテゴリーから「学習者としての自信の獲得とやる気の維持」「内的外的学習環境の整備」「学習継続のための生活スタイルの再構築」「職業人としての確かな役割遂行」「学習のための新たな人的サポートの確保」「研究プロセスの体験と自己への価値づけ」の6カテゴリーが明らかになった。 以上より、社会人大学院生の学習継続の条件として、職業人としての確かな役割遂行、同僚や上司からの信頼、人的サポートの獲得、明確な入学動機、生活基盤の安定の5条件が示唆された。
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