研究課題/領域番号 |
17612005
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊勢田 哲治 名古屋大学, 情報科学研究科, 助教授 (80324367)
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研究分担者 |
戸田山 和久 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (90217513)
黒田 光太郎 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30161798)
杉原 桂太 南山大学, 数理情報学部, 講師 (40410758)
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キーワード | 倫理学 / 技術者教育 |
研究概要 |
本年度は徳倫理学および技術者倫理関連書籍を多数購入し、分析につとめた。特に、誇りの概念についての古典的な研究となっているヒュームの分析と、その現代における受容に関する研究を行った。そうした検討から判明してきたのは、誇りが倫理的な行動の動機付けとなるという視点は既存の徳倫理学では一貫して見落とされてきたということである。三月には伊勢田が実践・専門職倫理学会に参加し、最新の研究動向について調査を行った。アメリカの技術者倫理教育においても徳倫理学は注目されるようになってきてはいるが、倫理的に行動するための動機としてというよりは倫理的な技術者の徳目の内容として注目されているようであり、本研究の問題設定の独創性が再確認される形となった。 本研究分担者全員が参加する名古屋工学倫理研究会では、8月に『工学倫理の現在』の合評会、9月に北海道大学の研究グループとの合同のリスク研究会、12月に台湾の研究者と合同の国際ワークショプを開催した。また、伊勢田、戸田山、黒田、杉原の四人は、日本技術士会中部支部の分科会として組織された技術者倫理の研究会に継続的に参加してきた。 以上のような研究会を通して内外の工学倫理研究者および技術者と交流してきた中から現在の技術者倫理教育の問題点のいくつかがうきぼりとなってきた。一つは、誇りをベースとした倫理教育が望ましくないタイプのエリート主義につながるのではないかという疑念であり、これについてはさらに誇りの概念と心理の分析を進める必要がある。もう一つは、主に学生を対象としたものとして技術者倫理教育を構想することの問題で、むしろ企業における技術者に技術者としての誇りを涵養することが重要ではないかという指摘や技術士制度の拡充が企業技術者の誇りの根拠として機能しうる潜在性を持つという示唆が現場の技術者との討論から得られた。
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