研究概要 |
本年度は、新規フッ素化合物とモデル膜構成成分(DDPC)の二成分系及び多成分系の基礎物性を界面科学的に明らかにした。結果を以下に示す。 1)新規フッ素化合物の合成:新規フッ素化合物による薬物送達システムを考慮し,一分子内に炭化フッ素鎖と炭化水素鎖の両性質を合わせ持つ新規フッ素化合物及び部分フッ素化両親媒性物質を設計,合成物を得た。 2)Langmuir膜の基本物性測定の系統的に行い次のことが明らかになった。 二種の部分フッ素化両親媒性物質(FHCn)を人工調製肺サーファクタントに組込み、それらの気液界面における基本物性を測定した。人工調製肺サーファクタントとして、DPPCとDPPC/Hel 13-5(肺サーファクタントタンパク質アナログ)混合物を用いた。 2-1)DPPC/FHn系: 1.FHCnの添加によってDPPC単分子膜の凝縮が妨げられるが、膜の崩壊後FHCnは不可逆的にDPPC単分子膜から排出され、下相液側からDPPC単分子膜を安定化する。 2.長鎖FHCnはDPPC単分子膜の凝縮を促進し、高圧においてDPPC単分子膜の充填剤として働き、膜の安定性を増加させる。 2-2)DPPC/Hel 13-5/FHn系: 次に肺胞呼吸に見立てたヒステリスカーブ(圧縮・拡張過程)において、Hel 13-5はDPPC単分子膜から脱着、吸着を繰り返す。FHCnの添加によって、この現象は以下のように促進された。 1.FHCnは膜の圧縮に伴ってHel 13-5と共にDPPC単分子膜から排出される。 2.長鎖FHCnは、Hel 13-5の排出現象を促進する。特にF8C11OHを5〜10wt%添加すると、高圧部においてDPPCと混合単分子膜を形成することにより著しい膜安定化作用を示した。 以上これらの結果、部分フッ素化両親媒性物質(特に長鎖FHCn)の添加によって高価なHel 13-5を少量化でき、さらに人工調製肺サーファクタントの薬効の増大が期待できる。尚 安全性を評価する必要が有る。
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