研究概要 |
経済物理学,経営工学,知識科学などの横断的学問分野が次々と立ち上がってきている.このような横断的学問分野形成の場面では,複数の学問分野を体系的に複合させることが重要ではあるが,一般にそれは非常に難しい.したがって,横断的学問分野の教育に携わる教師の多くは自分の専門性に重心を置きがちになる。学習者は,そのような中で,複数の専門分野について断片的に学びながら,学問的関心を洗練(転化・詳細化)することになる.本研究課題では,横断的学問分野での教育の実態を分析する手法として,学習者の学習経験と学問的関心の変容の関係を明らかにする手法の開発を目指す。具体的には,教師が行う講義内容と,学習者の受講の前後の関心を表現するコンセプトマップ(概念地図法に準じた表現)を収集し,学習者の関心の変化と講義内容の相関を抽出する手法を考案した。 初年度は次年度での本実験の準備として,コンセプトマップ表現の洗練,オントロジーの構築・洗練,実験支援ツールの開発を行った. 1)予備実験に基づくコンセプトマップ表現の洗練:先行研究で開発したコンセプトマップ表現を,予備実験を通じて改善した。コンセプトマップを書く被験者に与えるテーマとしては,「自分の研究課題」,「受講した講義内容」,「読んだ論文の内容」といった様々なものが考えられる。様々なテーマ設定で被験者にコンセプトマップを作成させ,その様子を観察しながら,一般人(知識表現に習熟していない人)でも書きやすいコンセプトマップの表現形態を考案した。また,ノード数・一つのノードから出るリンク数の上限などについて,被験者にとって受け入れやすい設定について考察した. 2)知識科学オントロジーの構築:最初に知識科学に属する理論・手法などの基本概念を整理した。さらに,それらを関係付ける関係概念(手段・目標関係等)・行為概念(知る・造る・発見する)などを整理する。整理結果を,大阪大学産業科学研究所のオントロジー構築環境「法造」を用いてオントロジーとして表現する。
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