研究概要 |
一般的な乳癌と比較して,5年生存率で40%と著しく予後不良である広範リンパ節転移乳癌を対象とし,プロテオーム解析にて,転移関連蛋白を主に,特異的発現蛋白を同定し,その中より病態を引き起こす機序,臨床的に有用な標的を見いだすことを目的とし本研究を行った. (1)病理形態学的解析:初回手術時,広範リンパ節転移(10個以上)が認められた約100症例につき,原発巣の詳細な病理形態学的検索を行うとともに,免疫組織化学的手法・RT-PCR法にて,リンパ管新生因子VEGF-C,D発現,リンパ管マーカーflt-4,podoplanin,D2-40にてリンパ管密度,形態計測を行い,乳癌細胞からのVEGF-C,D産生に比例し,局所リンパ管新生が惹起され,リンパ節転移を引き起こすこと,またこれが予後因子となることを明らかにし,報告した. (2)プロテオーム解析:切除乳癌組織を用い,凍結標本切片よりコラゲナーゼ法にて,癌細胞を単離,蛋白抽出,調整の後,二次元liquid chromatography(2D/(n)D-LC)-MS(n)ならびにLC-LTQ-FTにて,蛋白分離,質量解析を行い,proquest等で,蛋白同定をおこなった.比較群として,RT-PCR法にてnO(リンパ節転移なし)が確認されている症例を用いた.結果,広範転移乳癌症例で5倍以上の特異的発現を示す蛋白約2000分子を同定し,現時点で六個の特異的発現蛋白につき,(3)定量的RT-PCR,免疫染色によるバリデーションを行った. 結果,collagen XIVの広範リンパ節転移乳癌における特異的発現を見出し,高悪性度乳癌invasive micropapillary carcinomaのバイオマーカであることを発見,特許申請を行った.
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