前年度に引き続きラット三叉神経節の細胞を採取、培養を行い、LPSあるいは各種炎症性メディエータ(Prostagrandin E2、Bradykinin、Histamin、Serotonin)を作用させた。ウサギ抗CD14抗体あるいはウサギ抗TLR抗体、モルモット抗VR1(カプサイシン受容体)抗体を用いて免疫組織学的手法によりTLR4およびCD14の局在の変化を検索した。本年は、各種炎症性メディエーター炎症性メディエーターの濃度を変化させて作用させた。しかしながら、前年度同様に群によっては陽性反応は見られるものの細胞の形状の変化があり、各種炎症性メディエーターとTLR4およびCD14の発現の相関は確認できなかった。 一方で、各種炎症性メディエーターは、LPSはTLR4およびCD14を介して直接あるいは間接的に惹起された免疫反応ににより分泌される。これらは歯髄炎あるいは根尖性歯周炎を発症させ痛みを引き起こすが、症状と組織の病態が必ずしも一致せず、術前に炎症の程度を把握することや術後の疼痛を予測することは難しい。実際の歯科臨床における炎症性メディエーターと痛みとの関連を探るべく、炎症性メディエーターのひとつであるSubstance Pの産生量をヒト新鮮抜去歯を用いて比較した。これらは術前の診査により、急性歯髄炎、慢性歯髄炎、急性根尖性歯周炎、慢性根尖性歯周炎、健常歯の5群に分類された。ELISA法にてこれらの歯根表面のSubstance P濃度を測定した。その結果、各群のSubstance P量には、有意な差は認められなかった。これらのことから、無症状の歯髄炎あるいは根尖性歯周炎であっても、歯根膜の炎症状態は強い場合があること、術後疼痛が生じる可能性があることが示唆された。本研究より、歯髄の生死や症状の違いに関わらず、歯根膜で相当量のSubstance Pが産生されていることが分かった。
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