研究概要 |
Stigmoid body (STB)は、ほ乳類の脳内で辺縁系や視床下部に特異的に分布している神経細胞質内封入体(1〜4μm)であり、脳内分布と電顕レベルでの構造が明らかにされている。しかしながら、脳内における生理的役割については明らかにされていない。本研究の目的は、脳内におけるSTBの時期特異的変化とステロイド受容体との関係に注目した形態学的基盤を固め、脳解析における重要な構造としてのSTBを確立することである。STBのマーカー分子として、ハンチントン病関連タンパクであるHAP1(Huntingtin-associated protein 1)が知られていることから、我々はHAP1に対する抗体を作製し、免疫組織化学法により十分解析可能な特異性の高い抗体を得ている。胎生期(embryonic day 15,17,20)及び生後発達期(postnatal day 0,1,2,3,4,6,9,12)、若年〜成獣、老齢ラット脳切片を用いて、HAP1抗体による免疫組織化学を行い、内側扁桃体や分界条床核を中心にHAP1-immunoreactive STB (HAP1-I STB)の変化を解析した。その結果、胎生後期からHAP1-I STBが出現し始め、生後2週間の間に顕著に増加し、以後減少傾向にあった。このような現象は、扁桃体や分界条床核の中でもそれらの亜核により変化の度合いが異なることが分かった。また、HAP1-I STBと性ステロイド受容体[アンドロゲン受容体(AR)とエストロゲン受容体(ERα)]の関係においては、隣接切片を用いた免疫組織化学により、HAP1-I STBとそれぞれのステロイド受容体の脳内分布関係の詳細な解析が終了した。更に、免疫二重染色の結果、AR及びERα共に、扁桃体や視床下部、脳幹の一部の領域に高頻度の同一ニューロンにおける共存関係を認めた。
|