今年度は、タイ北部の無文字社会であるスゴー・カレン社会を対象にフィールド調査を行い、伝統的な製布技術の構造と、その伝承システムを解明するための基礎的なデータを収集し、整理した。具体的な内容は以下のとおりである。 ●スゴー・カレンの製布技術に関するフォークタームをかれらの言語によって文字化して記録するために聞き取り調査を行った。 方法1)調査時期:スゴー・カレンが織物(布)製作に時間を費やすことのできる時期(農閑期)や、原材料を栽培する時期も考慮し、6月から12月の期間中に実施した。2)調査地:タイ国、主としてチェンマイ県ドーイサケット郡、サムーン郡である。3)調査対象者:製布技術に習熟している女性8名。4)聞き取り調査に用いた言語:スゴー・カレン語、北タイ語、タイ語。5)本人に調査の目的と内容を説明した上で、調査協力について了承を得た後、対象者の属性((1)氏名、(2)年齢(生年月日)、(3)住所、(4)同居家族数、(5)職業、(6)移住歴)を確認し、対象者の記録帳を作成した。6)記録媒体:文字・ビデオカメラ、デジタルカメラによる電子メディアを用いた。文字はローマ字表記が可能なものについては通常のアルファベットを、特殊な音については国際音声表記(IPA)をそれぞれ用いた。7)聞き取り調査の質問項目は、製布技術内容と技術に必要とされる用具(使用法)、及びそれらに関わるフォークタームであった。 ●研究計画(2) 研究計画(1)により明らかになったフォークターム(製布技術要素)を、原材料から布へと完成させるまでの過程に添って整理した。表記にあたってはスゴー・カレン語だけではなく日本語、英語、タイ語を併記した。
|