平成17年度は、研究計画の初年度であることから、まず、研究を効率的に行うために必要な設備・備品(コンピュータ、ソフトウェアなど)を整備した。そして、申請書に記載した計画にしたがい、履行期前の履行拒絶法理に関する文献のうち、国内で比較的容易に入手可能なもの(日本法に関するものおよびドイツ法に関するもの)を収集し、これらのうち、特に日本法に関する文献を精査・精読することにより、わが国における従来の判例・学説の状況を把握する作業を行った。また、ドイツ法については、2002年にドイツ債務法が全面改正され、履行期前の履行拒絶に関しても規定が新設されるなど大きな動きが見られるが、平成17年度については、さしあたり2002年の法改正前における学説の状況を中心に、日本国内に存する文献につき可能な範囲で収集および調査を行った。その結果、ドイツにおいては、履行期前の履行拒絶を理由とする契約解除権の解釈論的根拠につき学説上対立がみられること、これらの議論の中にはわが国の解釈論にとって有益な示唆が含まれていることが確認できた。 他方、契約危殆のうち、履行期前の履行拒絶法理と密接な関連を有する履行停止権および履行期前解除権について、後掲「11.研究発表」記載の論文を公表した。これは、現在調査中の「履行期前の履行拒絶法理」とともに契約危殆という新しい債務不履行の一領域が存すること、およびその法的効果としての履行期前の法的救済を提示したものであり、本研究の中心的業績のひとつである。
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