平成18年度は、前年度に収集した文献を引き続き精査することにより、ドイツ法における履行期前の履行拒絶論を正確に把握することに努めた。その一環として、当初の研究計画どおり、日本国内で入手が不可能またはきわめて困難なドイツ法文献について、ドイツに赴いて収集および調査を行った(平成18年12月)。 他方、現代契約法の大きな潮流となっている契約法の国際的ないしヨーロッパ域内における平準化に向けた試みのひとつである「ヨーロッパ契約法原則I・II」を翻訳し(共訳)、これを公刊した。担当部分は、債務不履行及びその救済手段一般に関する規定およびその解説部分である。ここには、履行期前の履行拒絶に関する規定は含まれていないものの、債務不履行及びその救済手段に関する総則規定であるため、わが国の債務不履行体系を再検討するうえで、重要な比較対象の材料である。 また、債権総論に関する教科書を共同執筆し、そこにおいで「債権の対内的効力」を担当した。具体的な執筆部分は、主として債務不履行に関する部分である。学部学生および法科大学院1年生を主な対象とした標準的な教科書という性質上、本研究の成果のみを強調することはできないものの、執筆担当部分の中心は、本研究テーマと密接な関連を有する債務不履行であるため、従来の判例および通説的見解を踏襲しつつも、本研究の成果を反映させ、債務不履行体系の再構成を目指す新たな見解や近時における国際的潮流に関する紹介や分析も随所に交えた。
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