研究概要 |
1.計測方法の完成 大深度を有する海域の表層混合だけをとらえるために,自由浮上型鉛直微細構造測定装置による観測方法を考案した.通常,本装置は水深100m以浅の海底に着底させ自動切り離し装置で錘を切り離して自由浮上を開始させるが,ここでは錘切り離し装置と測器回収用のケブラーワイヤーとの接続を工夫し,海底に着底しなくても中層の水深100m程度から自由浮上を開始できるようにした.この方法で取得したデータを解析したところ風による表層鉛直混合の様子がよく捉えられており,本方法の安定性と有用性が確認できた. 2.鉛直微細構造と植物プランクトン鉛直分布との相関性 自由落下型鉛直微細構造測定装置を用いて,広島湾の固定観測点で2005年7月27日から28日に20時間連続測定を実施し,水平流速の鉛直シア,水温,塩分,クロロフィル蛍光強度ならびに濁度の微細構造を取得した.また,上層と中層で採水して植物プランクトンの種類と細胞数およびクロロフィルαの分析を行った.このほか,複数の藻類に対するクロロフィルαが一度に観測できる蛍光強度計を併用して,植物プランクトン鉛直分布のデータを取得した.現在,これらのデータをとりまとめて微細構造と植物プランクトン鉛直分布の相関について解析中である. また,三重県英虞湾で取得した鉛直混合強度のデータを整理した.その結果,鉛直方向の鉛直渦動拡散係数Kzの平均値は10^<-5>m^2s^<-1>から10^<-2>m^2s^<-1>であり,湾口部で高く,湾奥部で小さかった.また,湾口部と湾奥部のエネルギー逸散率を比較したところ,やや湾口部が高い程度であった.しかし,成層強度を示すバイサラ周波数の二乗N^2は,Kzが最大だった湾口部よりも湾奥部で強いという結果が得られた.したがって,観測期間中の英虞湾湾奥部の強い成層が,湾奥部でKzが小さかった原因と考えられた.
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