シロイヌナズナFAD7遺伝子の傷害にともなう局所的な発現誘導を高感度かつリアルタイムに検出するために、この遺伝子のプロモーターとホタルルシフェラーゼ遺伝子の融合遺伝子(FAD7-LUC)を導入した形質転換シロイヌナズナを作製した。さらに、傷害ストレス応答における主要な制御因子として知られるジャスモン酸(JA)の代謝あるいはシグナル機構に異常をもつ既知突然変異体との交配系統(計21系統)を作製することにより、傷害にともなうFAD7の発現誘導において、(1)JAに依存的(シグナル伝達体としてSCF^<COI1>ユビキチンリガーゼを含み、AtMYC2転写因子は含まない)および非依存的なシグナル経路間の相乗的な相互作用が必要とされること、(2)エチレン・アブシジン酸・サリチル酸といった他のストレス関連ホルモンによるシグナル機構は介在しないこと、(3)組織に応じて部分的に異なったJAの代謝経路および生合成酵素のアイソザイムが関与することが示された。他方、FAD7-LUC導入系統に対して変異原処理を施し、その子孫世代をスクリーニングすることにより、傷害に対して高感受性、低感受性の新規突然変異体をそれぞれ1系統単離することに成功した。前者については、前述の既知突然変異体とのエピスタシス解析により、原因遺伝子がJAに依存的および非依存的なシグナル経路の双方において機能する、負の制御因子をコードすることが示された。また、マップベースドクローニング法による原因遺伝子のマッピングを、第4染色体上の単一BACクローン内に位置づける段階まで完了した。
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