研究概要 |
本研究は、西アフリカのガーナにおける伝統的な営農様式の解明を通じて、農業生産性の向上の方途を探ることを目的としている。研究の実施期間は、3カ年を予定しており、2年目に当たる平成18年度には、現地での聞き取り形式による本調査を実施した。本調査の焦点は,(1)農家・集落レベルにおける営農体系の解明とFSR/Eによる農業生産構造分析,(2)農村社会システムと精度的改革,(3)農産物加工と流通システムの解明,である。なお,調査の結果は以下の通りである。 (1)調査は,ガーナ北部州の2ヵ村を調査地とし,各農村5つのコンパウンドを対象に実施した。その結果,1つの村では人口増加により土地の細分化が進行してきたが,ここ数年の個人個人の農業経営規模は増減があまり見られない。ただし,現状では1人当たりの農地面積は比較的狭く,同村の若年層農民は農繁期に村外で出稼ぎ農業をするか栽培作物を当該地域の主要換金作物であるラッカセイ主体にするなどの付帯条件が厳しくなってきている。一方,もう1つの村では各コンパウンドあたりの土地面積は比較的広く,土壌条件も良好のようである。しかし,農民数の増加により,個々の農民の土地分有面積は徐々に狭くなってきているようであり,今後の土地の細分化が懸念される。ただし,この村では当該地域の重要な換金作物であるラッカセイの栽培以外にもヤムイモを換金作物として栽培できることが強みとなっている。 (2)ガーナ北部地域に押し寄せつつある市場自由化の波は,近年の人口増加と重なって,徐々にではあるが貨幣経済システムの浸透を強化し,慣習社会の一部に変化をもたらしつつあると考えていた。しかし,不安定で厳しい環境条件下において営まれる農業においては,貨幣獲得を主目的とした集約型の営農は必ずしも望ましいものではないが,その存立条件によっては,人口の調節により営農規模を維持するという行動も出現してきていることが明らかとなった。
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