最終年度の平成19年度では、これまで情報が不足していた(1)農産物加工と流通システム、(2)営農技術の開発・普及システムおよび農民組織化、に焦点を当てて現地調査を実施した。 その結果、ガーナの伝統的な農村部における農産物加工については、大部分が在来技術を利用するか簡易技術による加工を主流としており、また流通システムについても慣習的なシステムからの域を脱しておらず、この硬直的なメカニズムが当該地域の農業・農村開発の大きな障害となっていることが明らかとなった。一方、営農技術の開発・普及に関しても、大部分の農民が在来技術への依存度が高く、生産性の向上はほとんどみられないのが実状となっている。しかし、主要幹線道路に近く市場経済化の影響が強まりつつある農村では、一部の農民がこれまで人力のみで行ってきた作業の一部で畜耕を取り入れ始めており、労働の軽減を図る努力がなされていた。こういった技術の改良は、必ずしも飛躍的な成長に直結するものではないが、着実な開発へ向けて一歩踏み出した行動であるとも捉えることができよう。 本研究では、ガーナにおける伝統的な営農様式の解明を通じて農業生産性の向上の具体的な方途を探り、農業を基盤とした経済開発の可能性を検討することを目的としてきた。しかし、農民を取り囲む慣習や伝統に基づき長年かけて積み重ねられてきたその営農様式は、農業生産性向上のためだけを目的とした場合、容易に変化させられるものではない。したがって、ガーナの伝統的な農村部の農業・農村開発を進展させるためには、その技術変化の意味や必要性を現地農民が十分に理解し、そのために何ができるのかを判断して受け入れたときにこそ、農業生産性向上のための一歩が踏み出されると考えられる。
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