研究課題/領域番号 |
17F17337
|
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
馬 仁志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, グループリーダー (90391218)
|
研究分担者 |
LI XINMING 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2017-11-10 – 2020-03-31
|
キーワード | ナノシート / グラフェン / イオン伝導 / センサー |
研究実績の概要 |
二次元酸化物ナノシートと酸化グラフェンのヘテロ構造薄膜におけるプロトン伝導特性にフォーカスを当て、研究を進めてきた。ナノシート及び酸化グラフェン単体薄膜のプロトン伝導特性の考察結果に基づいて、巨視的非対称的な構造とイオン伝導チャンネルを持つ薄膜デバイスを作製した。具体的には、酸化チタンナノシートから構成されるマイクロスケールフィルムの両側にそれぞれ金属電極とグラフェンを用いた伝導回路を構築した。金属電極とグラフェンの導電性を利用し、外部回路の測定装置と直列に接続できるので、交流インピーダンス法などの手段により電子・イオン伝導特性の評価を行った。この非対称構造の最大の特徴は、金属電極はプロトンを伝導または貯蔵することができないのに対し、酸化グラフェンは表面官能基や欠陥やなどに関連するプロトン伝導ナノチャネルを有することである。酸化グラフェンナノチャネルが一定の量のプロトンを貯蔵することができると考えられる。そのため、電流-電圧試験では作製した薄膜デバイスがダイオードと同様に電流遮断の現象を示すことが分かった。この結果に基づき、相対湿度の変化を伴う大気環境の中または不活性ガス条件下でのデバイスの電流-電圧特性を解析することによって、薄膜デバイス内の主たる伝導キャリアがプロトンであることを明らかにした。さらに、グラフェン側がキャパシタと同様に静電容量を貯蔵する一方、酸化チタンナノシートと金属電極との界面にはイオンを蓄積することが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って、酸化物ナノシートと酸化グラフェンとの巨視的ヘテロ構造薄膜デバイスを構築した。酸化物ナノシートの電子伝導度が極めて低いので、このヘテロ構造デバイス内の伝導キャリアは電子ではなく、主にイオン(プロトン)を輸送することが明らかになった。当初の研究計画の中に提案した伝導キャリア規制は、主にプロトン輸送の調節にあたることを確認した。酸化グラフェンがキャパシタと同様にプロトンを貯蔵する現象を利用し、温度・相対湿度以外に、電場や光学励起を印加することによって、外場に応じてプロトン輸送の調節が可能となる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、酸化チタンナノシート及び酸化グラフェンの真空濾過膜におけるイオン伝導特性の評価を進めるとともに、微細加工技術により酸化チタンナノシート膜の上に微小電極を形成し、マイクロスケールでのプロトン伝導特性を考察する。具体的には、微小電極デバイスにおいて、半導体トランジスタの基本モデル分析に基づき電子・イオン伝導機構を解明する。さらに、非対称的な構造とイオン伝導チャンネルを持つ薄膜デバイスを中心に、電場や光学励起を印加することによって、外場に応答できるようプロトン移動・輸送の調節実験を行う。 引き続き、温度・相対湿度など外部環境の変化により酸化物ナノシートとグラフェンの界面に電位差が生じる現象を重点的に考察する。ナノシートとグラフェンがそれぞれプロトン・イオン貯蔵・蓄積に対する異なる特性を活用し、湿度の調節によってヘテロ接合膜のイオン伝導度やキャリア濃度勾配の変化を詳しく解析する。外部環境変化に応答するメカニズムを明らかにした上、センシング素子やモイスチャーセンサーとしてのデバイス作製を目指す。
|