研究課題/領域番号 |
17H00769
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小長谷 明彦 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (00301200)
|
研究分担者 |
野口 洋文 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50378733)
豊田 太郎 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80422377)
池田 将 岐阜大学, 工学部, 教授 (20432867)
湯川 博 名古屋大学, 工学研究科, 特任講師 (30634646)
梅田 民樹 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (90243336)
柳澤 実穂 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (50555802)
川又 生吹 東北大学, 工学研究科, 助教 (30733977)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 分子ロボティクス / DNAコンピュータ / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
リポソームそのものに感覚,知能,運動の機能を付加するために、リボソーム凝集体の作成、小動物における/in vivo/蛍光イメージ、リポソーム凝集体の評価、グルコース応答性有機分子の合成、膜透過性調整法の確立、DNAハトメ構造の設計、リポソームシミュレーション、可視化シミュレーションを行った。 リポソーム凝集体の作成に関しては、インスリンを内包し、血清共存下での膜破裂、血管網を模した/in vitro/評価において血流速度でのマイクロ流体デバイス内部での滞留を確認した(豊田)。小動物における/in vivo/蛍光イメージに関しては、/in vitro/のジャイアントベシクル凝集体に蛍光標識用量子ドットを導入し、量子ドット由来の鮮明な蛍光を確認した(湯川)。リポソーム凝集体の評価に関しては、/in vitro/評価に用いる糖尿病モデルマウスを作成し、膵島移植により血糖を改善できることを確認した(野口)。 グルコース応答性有機分子合成に関しては、グルコースに応答して親水-疎水バランスが変化する新規のボロン酸誘導体を設計した(池田)。膜透過性調整法の確立に関しては、タンパク質ゲルを内包したリポソームの形成法およびリポソーム内に封入したペプチドホルモンの膜透過性調整技術について検討した(柳澤)。DNAハトメの創成に関しては、DNAハトメ前駆体のコレステロールによる脂質膜上への固定法ならびに平面脂質膜上におけるDNAハトメ前駆体の拡散・反応による凝集の観察実験を行った(川又)。 リポソームシミュレーションに関しては、コンパートメントが2つの場合について数値シミュレーションを行い,実験を再現するための形状と膜面に働く張力との関係について調べた(梅田)。可視化シミュレーションに関しては、超分子設計支援環境を整備しDNAオリガミ構造体ならびにリポソームの原子モデルを作成した(小長谷)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は翌年以降に予定されている血糖値制御型分子ロボットのin vivo評価に必要な要素技術開発ならびにin vitroでの検証に注力した。 リポソーム凝集体の作製に関しては、生体内血管網を模倣したマイクロ流体デバイスにおいてリポソーム凝集体の膜破裂の観察を完了した(豊田)。小動物におけるin vivo蛍光イメージに関しては、in vivo蛍光イメージングに必要な蛍光強度を有することをジャイアントベシクル凝集体の蛍光標識において確認した(湯川)。リポソーム凝集体の評価に関しては、in vivoでの血糖値制御型分子ロボットの実験に必要な糖尿病マウスの作成ならびにコントロールデータとなる膵島移植に成功した(野口)。 グルコース応答性有機分子の合成に関しては、リポソーム膜への親和性が高く、グルコースとの結合力が強い新規のボロン酸誘導体を設計し、純度の高い化合物を得るための合成法を確立した(池田)。膜透過性調整法の確立に関しては、半径が約50 um以下であれば細胞と同等の弾性を付与できるゼラチンを内包した細胞モデルを作成し、内部に閉じ込めた低分子が外部へ放出可能であることを確認した(柳澤)。 DNAハトメの創成に関しては、DNAオリガミ構造体による実装およびDNAハトメの前駆体となるDNA-コレステロール複合体の脂質膜上での凝集を確認した(川又)。 リポソームシミュレーションに関しては、膜面に働く張力をパラメーターとする数理モデルを作成し,凝集体の形状と膜張力の関係について数値シミュレーションを行なった(梅田)。可視化シミュレーションに関しては、リポソームの原子モデルシミュレーションに向けた超分子設計環境ならびに分子動力学シミュレーション環境を整備した(小長谷)。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、前年度に行った要素技術開発ならびにin vitroでの検証結果を踏まえて、血糖値制御型分子ロボットのin vivo実験に注力する。 リポソーム凝集体の作製に関しては,グルコース存在下での分子変換に基づくリポソーム凝集体のインスリン放出をin vitroおよびin vivoで検証する(豊田)。小動物におけるin vivo蛍光イメージに関しては、ヌードマウス等を用いて、量子ドット内包ジャイアントベシクル凝集体のin vivo蛍光イメージングに取り組み、凝集体の安定性、機能性評価を進める(湯川)。リポソーム凝集体の評価に関しては、リポソーム内に蛍光物質を取り込ませた後に移植を行い、移植後のリポソームの動向および血糖値上昇後のリポソームの変化をin vivoで確認する(野口)。 グルコース応答性有機分子の合成に関しては、既に合成したボロン酸誘導体のリポソーム導入に関する実験結果をフィードバックして、グルコース濃度に対する応答能を改良するための分子設計をする(池田)。膜透過性調整法の確立に関しては、細胞モデルにゼラチンとゲル化しない高分子を添加し、相分離させることで自発的にゼラチンカプセルを形成し、その厚みを調整することで膜透過率の定量的制御を目指す(柳澤)。DNAハトメの創生に関しては、DNAと脂質膜間の意図しない非特異的結合の抑制とDNAハトメ構造の穴径を中心に再設計を行う(川又)。 リポソームシミュレーションに関しては、コンパートメント数が3個以上の場合も含めたリポソーム凝集体形状の数値シミュレーションを進め、実験結果との比較でモデルを検証する(梅田)。可視化シミュレーションに関しては、原子モデルによるリポソーム分子動力学シミュレーションを進め、計算結果を分子設計ならびに実験にフィードバックする(小長谷)。
|