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2018 年度 実績報告書

水環境中残留医薬品類の多面的評価と薬理活性の除去性能評価

研究課題

研究課題/領域番号 17H00786
研究機関京都大学

研究代表者

中田 典秀  京都大学, 工学研究科, 講師 (00391615)

研究分担者 井原 賢  京都大学, 工学研究科, 特定助教 (70450202)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード薬理活性 / 環境医薬品 / 予測スクリーニング / バイオアッセイ / 精密質量分析 / ノンターゲット分析 / 下水処理性能 / ターゲット分析
研究実績の概要

数多くの医薬品成分が水環境中から検出されている。一方で、機器の高精度化に伴い、分析対象を決めたターゲット分析では、上・下水道や環境中で分析対象物質の構造がわずかに変化しただけでも検出できないというジレンマが生じる。このような背景から、分析対象を定めないノンターゲット分析が普及しつつあるが、膨大な検出ピークの同定には時間を要する。そこで本研究では、水環境中に残留する医薬品等の薬理活性物質の俯瞰的評価手法を確立するため、薬理活性を直接検出可能なGタンパク連結型受容体を組込んだin vitroアッセイ(GPCRアッセイ)と、液体クロマトグラフ-タンデム四重極質量分析計(LC-MS/MS)によるターゲット分析、LC-飛行時間型MS(LC-QTof-MS)による予測スクリーニングを組み合わせた手法の検討を行っている。
2018年度は、下水処理場の放流水に対し、3アプローチにより過年度に得られた分析結果を精査するとともに、ターゲット分析の拡充等の以下の検討を行った。GPCRアッセイで確認された拮抗活性値と、ターゲット分析により検出された濃度と検出成分の比活性値との間には、用いるGPCRによっては乖離が確認された。この乖離を埋めるため、ターゲット分析対象外の市販薬の精密質量を用いたLC-QTof-MS分析結果のスクリーニングによる存在予測、対象市販薬の売上調査、活性の定量化(比活性値の測定)、GPCRアッセイにより検出された拮抗活性値に対する寄与と下水処理放流水中の存在が予見されたいくつかの成分について、ターゲット分析による定量方法を確立した。その後、近畿圏の下水処理場より放流水を採取し、ターゲット分析を行い、実試料から検出した。これらの結果より、注視すべき水環境中の薬理活性およびその原因物質、下水処理過程における処理性、下水処理水受水河川における存在実態を提示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予測スクリーニング結果をもとに、先行研究において開発した約50種の医薬品成分の一斉分析法へこれまでにいくつかの新規物質の追加を検討した。具体的には、先行研究において水環境中から検出された薬理活性の内、特に活性が高かったアンギオテンシンII受容体(AT1)拮抗薬(ARB)成分5種と分解産物1種、ヒスタミン(H)1受容体拮抗薬(H1RB)成分4種、H2受容体拮抗薬(H2RB)成分3種、β受容体拮抗薬(βRB)成分の分解産物1種など合計20成分以上を追加した。予測スクリーニングは、医薬品を中心に、環境中での検出事例がある成分と、その代謝産物など、約450成分の精密質量情報をもとに作成したライブラリーにより行った。ターゲット分析の分析精度の検討を終えた後、下水処理場放流水中の存在実態を把握した。並行して、予測スクリーニングで存在が予見された成分や、ターゲット分析対象に追加した成分について、比活性値を実測した。下水処理水から検出され、かつ比活性値が実測されている成分については、検出濃度と比活性値の積より理論的な活性値(理論値)を算出し、GPCRアッセイにより検出された実測値と比較した。AT1拮抗作用については、ターゲット分析成分と比活性値データの蓄積から、両値に正の相関が確認された。H1とβRB拮抗作用については、両値に未だ大きな乖離が確認された。H1拮抗活性については、2018年度にターゲット分析に追加したepinastineの寄与が大きいことが確認された。atenololやpropranololに代表されるβRB拮抗薬は、ARBのように化学構造が類似していることから、質量分析における共通フラグメントの検出により、βRB拮抗活性に寄与する化学物質の探索を試みた。その結果、これまでに国内では検出事例の無いbisoprololの存在を確認し、標品を用いた検討から、同物質を同定した。

今後の研究の推進方策

過年度までのバイオアッセイでは、主に向精神薬・抗血圧治療薬の標的であるドーパミン受容体(D2)、主に胃酸分泌抑制薬の標的であるムスカリン性アセチルコリン受容体(M1)に対する拮抗活性についても検出されたが、ターゲット分析により定量された検出濃度と、検出成分の活性値をもとにした理論的な活性値(理論値)との間で乖離が確認された。これは、分析対象外の医薬品成分や代謝産物、他の活性化学物質の存在や、交差反応、複合作用などが予想される。そこで、バイオアッセイでは、前年度の調査において高濃度かつ高頻度で検出された薬効分類の活性について、日本での販売実績をもとに当該薬効成分の活性値の測定を引き続き行いつつ、交差反応や複合影響についての情報を収集し、結果を再評価する。予測スクリーニングでは、バイオアッセイを行った試料中の未同定成分の確認を引き続き進める。バイオアッセイ、予測スクリーニングによる成果より、必要に応じてターゲット分析の対象成分を拡充する。
バイオアッセイ、ターゲット分析、予測スクリーニングによるアプローチについて、上記の検討を終えた後、下水および下水処理水に対しこれらのアプローチを再度適用し、本手法により、環境中に残留する医薬品の存在実態の把握と、現行下水処理における処理能力の評価を行う。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019 2018

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] バイオアッセイ、ターゲット分析、予測スクリーニングによる下水処理水中の各種受容体拮抗作用物質の探索2019

    • 著者名/発表者名
      中田典秀、張晗、井原賢
    • 学会等名
      日本水環境学会 第53回日本水環境学会年会
  • [学会発表] 生理活性に基づく下水処理水中のアンジオテンシンII 受容体拮抗作用(薬)のターゲット分析および予測スクリーニング2018

    • 著者名/発表者名
      中田典秀、張晗、井原賢
    • 学会等名
      日本環境化学会 第27回環境化学討論会

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公開日: 2019-12-27  

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