研究課題/領域番号 |
17H00804
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
井上 真 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10232555)
|
研究分担者 |
平塚 基志 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (00649585)
伊達 規子 (大久保規子) 大阪大学, 法学研究科, 教授 (00261826)
高村 ゆかり 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70303518)
笹岡 正俊 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (80470110)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | Heart of Borneo / 生態系保全 / 先住民の生計 / 国立公園 / 焼畑農業 |
研究実績の概要 |
A.地域班: (1)国立公園地域 (連携研究者:東洋大学・寺内大左): 国立公園のゾーニングの中で比較的地域住民の利用が許されている特別ゾーンと伝統ゾーンにおいて焼畑民の生業の核となる焼畑が禁止されているか許可されているのかはっきり明記されていないことが明らかになった。 (2)焼畑農業を主生業とする遠隔地域(笹岡正俊):ポンプ保持者および金採取労働組織メンバーの多くにとって、金採取が家計収入の大部分を占めること、金採取労働組織への参加は多くの人に開かれていると認識されているが実際にはポンプ保持者と何らかの親族関係にあるものが採取労働に従事していること、金採取により河川の汚濁が起き河川での漁労に悪影響を与えていると認識している人が多い一方で将来の望ましい開発の姿として慣習法組織による統制のもとで小規模金採取を行うのが良いと認識している者が多いことがわかった。 (3)焼畑農業・商業的森林伐採併存地域(連携研究者:地球環境戦略研究機関・河合真之):慣習地の領域および行政上の土地利用区分の重なりを明らかにし、また村の有する課題と関連する優先政策(保健向上、教育・能力開発、インフラ整備、緑化、農業振興、エコツーリズムの強化等)を特定した。 B.評価班(井上真・平塚基志、研究協力者:早大・藤井紘司): アポカヤン地域のマハックバル村を訪問し村が木材会社の伐採エリアを限定し村の慣習保全林の保全を図っていること、また、同社に村のインフラ整備を打診するなどのパートナーシップ関係を構築していることを明らかにした。 C.政策班(伊達規子、高村ゆかり、井上真): 土地改革・空間計画省、国家開発企画庁、WWFインドネシアへの聞き取り調査から、地方政府の人材不足が課題であること、及び予算を含めた政策全般を地域特性(土地条件や民族の特徴等)に適合させることが重要であることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域班による3地域の現地調査、評価班・政策班による合同調査(ジャカルタでの情報収集及び対象地域の調査)を予定通り実施し、データも順調に収集できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、7月にペールのリマで開催される国際コモンズ学会(IASC)にて、受理済みのセッション“Local commons and their future in globalized conservation and climate policies: cases from the Heart of Borneo in Indonesia”を運営し、政策班・評価班および3つの地域班の研究成果を発表する。各班ごとのその他の計画は次の通りである。
<地域班> (1)国立公園地域:カヤン・メンタラン国立公園地域の2村にて家計調査を実施し、生業の経済的意味および慣習的な資源利用のルールを明らかにする。(2)焼畑農業を主生業とする遠隔地域:マハックバル村で補足調査を行う。また、小規模金採取の今後を展望するための参照地として、早くから金採取が行われ現在は金採取業が停滞しつつあるいくつかの地域で聞き取りを行い、金採取の生計と森林環境への影響についての情報を収集する。(3)焼畑農業・商業的森林伐採併存地域:アブラヤシ農園開発、参加型森林管理(村落林)、カカオ栽培、村落予算等の地域社会に影響を及ぼし得る鍵となる要素に着目しつつ、2村(ロング・トゥヨッ村およびロング・バグン村)を対象として調査を実施し、住民の収入・支出、土地利用の選好、森林資源管理制度(ローカルコモンズ)の実態等を明らかにする。さらに村レベルでの気候変動緩和・適応・生物多様性保全の村落中期開発計画への主流化の可能性(特に2020年から実施されるREDD+に着目)を探る。
<評価班>、<政策班> 焼畑農業・商業伐採併存地域を訪れ、村人の生業実態、生態系保全への認識などを調査する。また、東カリマンタン州およびジャカルタの関連行政機関やNGOを訪れHeart of Borneo保全活動上の課題などについて聞き取り、議論する。
|