研究課題/領域番号 |
17H00804
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
井上 真 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10232555)
|
研究分担者 |
伊達 規子 (大久保規子) 大阪大学, 法学研究科, 教授 (00261826)
平塚 基志 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (00649585)
高村 ゆかり 東京大学, 未来ビジョン研究センター, 教授 (70303518)
笹岡 正俊 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (80470110)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | Heart of Borneo / 生態系保全 / 先住民の生計 / 国立公園 / 焼畑農業 |
研究実績の概要 |
2019年7月にペールのリマで開催された国際コモンズ学会にて、一つのセッションを運営し、政策班・評価班および3つの地域班の研究成果を発表し、参加者と議論をおこなった。その他の研究成果内容の概要は次の通りである。 <地域班>(1)国立公園地域 :カヤンムンタラン公立公園地域のロング・アランゴ村で実施した調査において,地域住民の収入状況と焼畑・水田の労働投下量・生産性について聞き取り調査を実施し、焼畑・水田面積の測量を行った。調査を終えたばかりなので結果は分析中である。(2)焼畑農業を主生業とする遠隔地域:マハックバル村での調査の結果、以下が明らかになった。1) 金採取従事者は比較的高い収入を得ており、金採取労働は魅力的な現金獲得活動になっている。2) 重要な食物資源のひとつである川魚の漁獲量が近年減っているが、川を汚染する金採取がその一要因であると認識している人が多い。3) 将来の土地資源利用の選択肢として、多くの住民が、従来の焼畑耕作を維持しながら現金収入が得られるような生計モデルを望んでいた。(3)焼畑農業・商業的森林伐採併存地域:文献レビューを通じて、東カリマンタン州の世界銀行の森林炭素パートナーシップファシリティー炭素基金によるREDD+の準備状況等を確認した。 <評価班・政策班> 第3の地域(焼畑農業・商業伐採併存地域)を訪れ、以下を明らかにした。(1)慣習林は現在でも維持されている。(2)アダットを重視した上での開発ならば住民に受容されやすい。(3)伐採企業はWWFと協力して村人とPartnership forestryのための合意形成をおこなう努力を継続している。(4)アブラヤシ農園開発は企業が正式な権利を獲得できず頓挫している。(5)国家森林政策の要として位置づけられている森林管理ユニットは現時点で組織が整備されているのは4つのうち1つのみと実施が遅れている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域班による3地域の現地調査、評価班・政策班による合同調査(ジャカルタでの情報収集及び対象地域の調査)を予定通り実施し、データも順調に収集できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は最終年度なので、これまでの研究成果に基づいて研究目的を達成するために必要な最後の詰めをおこなう。 <地域班> (1)国立公園地域:2020年2-3月にロング・アランゴ村で行った現地調査の結果を整理し,1)国立公園エリアと地域住民の資源利用の関係について,2)自給の持続可能性について,3)現金収入源の持続可能性について考察する。また、同様の調査をロング・プジュガン村でも行うとともに、慣習的に保全している自然資源とその社会の関係を動態的に把握する。これにより、適切な生計モデル・オプションの提示へと繋げる。(2)焼畑農業を主生業とする遠隔地域:これまで収集してきたデータを集計し、国際学術誌投稿用の学術論文をまとめる。その過程でどのようなデータが欠損しているか特定できるはずなので、そうしたデータを収集するための補足調査を実施する。その結果を踏まえて最終的に論文を完成させ、学術誌に投稿する。またマハックバル村で成果報告会を開催し、これまでの調査で明らかになったことを住民に還元する。(3)焼畑農業・商業的森林伐採併存地域:住民のカカオ栽培(地方自治体・WWF支援による)、企業によるアブラヤシ農園開発、Partnership forestryのための合意形成、森林管理ユニット組織整備、REDD+の進捗を把握する。そのうえで慣習法を重視した開発・生計戦略の在り方を提言する。また、東カリマンタン州への新首都移転および新型コロナウィルスの影響も可能な限り把握する。 <評価班・政策班> これまでの3年間で地域班の研究対象地のすべてを訪問し現地の概況を把握することができた。そこで、今年度は地域班から提案される生計モデル・オプションの実行可能性を現行の国家政策を前提として検討するとともに、現行の国家政策の限界も合わせて検討することで生計モデルの制度化に向けた道筋を提示する。
|