研究課題/領域番号 |
17H01012
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
山森 光陽 国立教育政策研究所, 初等中等教育研究部, 総括研究官 (60370079)
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研究分担者 |
中島 健一郎 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (20587480)
萩原 康仁 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター基礎研究部, 総括研究官 (30373187)
徳岡 大 高松大学, 発達科学部, 講師 (80780642)
草薙 邦広 広島大学, 外国語教育研究センター, 特任講師 (60782620)
大内 善広 城西国際大学, 福祉総合学部, 准教授 (00454009)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学級規模 / クラスサイズ / 学力 / 学習意欲 / 経年変化 / パネル調査 / テスト等化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,クラスサイズ(学級規模)が児童生徒の学力及び学習意欲等の経年変化に与える影響とその過程を明らかにすることである。この目的を達成するために以下3つの研究課題に取り組んでいる。第1に,クラスサイズの大小による小中学校をまたいだ学力偏差値の推移の違いを明らかにする。第2に,学力検査の垂直的等化を行い複数学年間をまたいだ能力の変化を測定できる共通尺度を作成しクラスサイズと学力の伸びとの関係を明らかにする。第3に,クラスサイズの大小による3年間の学習意欲等の経年変化の違いを明らかにする。これらは全て,児童生徒個別に得点が連結され,教師による指導の実施状況等も連結されたパネルデータを作成して分析を行う。 研究期間の3年目である2019年度には,小学校第1学年終了前後から第6学年終了前後までの学力偏差値(61校,4,144名),小学校第4学年時から中学校第1学年時までの学習意欲得点(58校,2,256名)を児童個別に結合し,各児童が各学年で在籍した学級の規模を連結したパネルデータの分析を行った。また,小学校第1学年終了前後から中学校第2学年終了前後までの学力偏差値(中学校88校,7,355名),小学校第4学年時から中学校第1学年時まで学習意欲得点(中学校40校,3,415名)を個別に結合したパネルデータを作成した。加えて,このパネルデータに連結するための学校・教師調査も実施したほか,対象地域全小中学校について学区のSESの代替指標となり得る学区在住者の学歴等のデータを作成し,分析に加えられるようにした。 なお,上記分析の分析結果は学会で発表した。加えて,クラスサイズに関する議論と関係の深い,研究知見(エビデンス)の学校教育に対する活用,及び,クラスサイズ研究の新たな研究手法として期待される生体情報の活用に関する学会シンポジウムを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間の3年目である2019年度では,分析に必要なパネルデータの整備が順調に進み,中間分析の結果を発表し,本研究に密接に関係する内容に関する議論の機会を設けることができた。 パネルデータの整備に関しては,小学校第1学年終了前後から中学校第1学年終了前後にかけての学力偏差値,小学校第4学年から中学校第1学年にかけての学習意欲等を個別に結合することができた。特に学力偏差値に関しては,結合率がおおよそ95%であった。また,これらのデータに含まれる対象生徒が在籍した学級のクラスサイズの履歴が連結された。さらに,対象生徒が2019年度に受けた指導の状況も,対象学級数の94%について連結できた。加えて,対象校の学区のSESの代替指標も連結できた。このように,従来においては類例の見られない小中学校間を接続させたパネルデータが作成された。 結果発表及び本研究に密接に関係する内容に関する議論の機会を設けたことについては,小学校第1学年終了前後から第6学年終了前後にかけての学力,小学校第4学年から第6学年にかけての学習意欲の推移のクラスサイズによる違いを学会発表した。さらに,自主シンポジウムを開催することで,本研究の深化と発展に寄与しうる議論がなされた。 このように,本研究の目的を達成するために必要なデータが適切に収集,整理され,研究期間の中間ではあるものの一定の知見も得られ,他の研究者との議論も行われた。これらの部分については,当初の計画以上に進展していると評価できる。 一方,学力検査の垂直的等化については,等化に必要な情報を取得するための検査を実施し,十分に分析可能な数のデータが得られた。ただし,この検査の実施は2年目である2018年度までに終了させる予定であったため,進捗はやや遅れていると評価される。 これらの内容を総合的に評価すると,「おおむね順調に進展している」となると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,5年間の研究期間の4年目までに,小学校第2学年から中学校第3学年までの学力パネルデータ,ならびに小学校第4学年から中学校第3学年までの学習意欲等に関するパネルデータの作成を行い,4年目の中盤以降から5年目にかけて,これらのデータの分析を行うこととしている。 本研究の目的を達成するための分析を行うことを目的に作成している小中学校を接続させたパネルデータについては,2020年3月から4月に実施された,中学校第2学年終了前後の学力偏差値のデータの結合を行い完成することとなる。しかし,2020年3月からのCOVID-19の流行にともなう学校休業の影響で,中学校第2学年終了前後の学力偏差値のデータ取得に支障が生じている。データ取得対象地域では,5月中旬以降に学校が再開される予定であり,再開後間もなく学力検査の実施を予定している。ただし,現時点で状況が流動的であることから,調査対象地域との調整を丁寧に進めながら,学力パネルデータの完成を目指したい。 また,COVID-19の流行により,所属機関の研究環境(処理が高速な計算機など)を利用できないのが現状である。また,研究分担者,研究協力者が参集することも困難である。このような状況の終息は見通せないが,現時点で得られているパネルデータに対する分析,複数学年間をまたいだ共通尺度の作成については,様々な通信技術等を用いることで計画通りに研究を遂行できるように努めたい。加えて,現時点で得られているデータを分析し,その結果を学会発表や学術誌に投稿していくようにするとともに,その過程で得られた知見を踏まえ,新たな調査や実験の実施方法についてもリサーチを進め,本研究の継続課題の内容の検討も並行して行いたい。
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