研究課題/領域番号 |
17H01030
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
池野 範男 日本体育大学, 児童スポーツ教育学部, 教授 (10151309)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シティズンシップ教育 / 学校 / ストランド / 教室研究 / 比較研究 |
研究実績の概要 |
本研究のねらいは、シティズンシップ(市民性)教育には、どのような教育効果があるのか、それも社会的にもどのような効果があるのかを明らかにすることである。そのために、各国・地域の学校でいろいろな形で進められているシティズンシップ教育の教育効果を、①政治的リテラシー、②道徳的社会的責任、③地域社会への関与、④多様性とアイデンティティの4つストランド(構成要素)にもとづき、14ケ国・地域の中学校事例調査をすることにしている。 2018年度は、質的研究の手法を用い、学校クラス研究を実施し、比較を試みた。シティズンシップ教育の相違や多様性を前提しつつ、一定の物差しとなる共通する要素や要因としてのイングランドの4つのストランド(①政治的リテラシー、②道徳的社会的責任、③地域社会への関与、④多様性とアイデンティティ)を用い、各国・地域のいくつかの学校をサンプル的に調査した。英国、ドイツ、デンマーク、オーストリア、中国、韓国、フィリッピン、シンガポールの学校を1-3校、調べ、各クラスの実態、また、教師や関係者の考えをインタビューして、調べた。 これらの調査に基づき、調査結果を7月、12月の国際会議、2月の国内会議で、社会的教育効果の事例研究を比較検討した。とりわけ、①政治的リテラシー、②道徳的社会的責任に関して、ヨーロッパとアジアで、顕著な差異が見られた。これら2つのストランドの中核を構成する政治、道徳の観念において、民主主義を重視するのか、人格を重視するのかに大きな違いがあることが判明した。 次年度に対して、残りの2つのストランド、③地域社会への関与、④多様性とアイデンティティにおいても、同様な相違がみられるのか、また、5つ目、6つ目の別のストランドを立てるべきかを調査することを課題として挙げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、14ケ国・地域を調査対象にして、各国・地域の学校シティズンシップ教育を調査し、それぞれの国・地域のシティズンシップ教育が4つのストランド(①政治的リテラシー、② 道徳的社会的責任、③地域社会への関与、④多様性とアイデンティティ)のうち、いずれ、あるいは複数のストランドを重視しているのか、あるいは、別の5つ目、6つ目のストランドを取り上げ、育成しようとしているのかを調べることを目的にしている。 2018年度は、2017年の研究結果を踏まえ、①政治的リテラシー、②道徳的社会的責任に焦点化して進めた。また、その結果を、その国の研究に伝え、議論をすることにしている。調査した国・地域すべてに十分行われたとは言えないが、ほぼなしえて、妥当なものとの意見をもらっている。 この点で、研究の進行は順調と判断している。しかしながら、③地域社会への関与、④多様性とアイデンティティへの目配り、多様な教室、また生徒の実態などの配慮を各国・地域の研究者の多くから忠告された。この点は、2019年度の課題とし、本研究のシティズンシップ教育ではとても重要で、かつ、現代的な研究課題である。この点を研究上で、配慮し進める必要があると理解し、課題としている。この点がおおむねとした理由である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の研究成果を踏まえ、2019年度の研究では、主に次の3点を重点化して進める。(1)ストランドのうち、①政治的リテラシー、② 道徳的社会的責任の2つを引き続き、研究の主な対象とするとともに、③地域社会への関与、④多様性とアイデンティティという、他の2つのストランドにも目を配ること。シティズンシップ教育が、①政治的リテラシー、② 道徳的社会的責任、③地域社会への関与、④多様性とアイデンティティの4つを主要なストランドにしていることを常に配慮することである。(2)これら4つのストランドのほか、別の、5つ目、6つ目のストランドがあるのかどうかをもっと発見的に調査すること。(3)各国・地域の研究者の本研究への参画を積極的に進める手立てを創り出し、共同研究の質の向上を努め、研究成果に関する信頼性を高めること、である。 これら3つは、研究の推進スピードをあげるとともに、質の向上を目指すことになるだろう。個々人の研究意識、またチームとしての研究集団の研究への取り組み、また、国際共同研究におけるチームワーク及び、研究仮説の共有理解の促進、さらには、研究成果の新たな発見と構築を目指すことでもあると、理解し、次年度の研究指針にする予定である。
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