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2020 年度 実績報告書

現代中国における腐敗パラドックスに関するシステム/制度論的アプローチ

研究課題

研究課題/領域番号 17H01638
研究機関法政大学

研究代表者

菱田 雅晴  法政大学, 法学部, 教授 (00199001)

研究分担者 天児 慧  早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 名誉教授 (70150555)
唐 亮  早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (10257743)
厳 善平  同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (00248056)
高原 明生  東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 教授 (80240993)
朱 建栄  東洋学園大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (30248950)
趙 宏偉  法政大学, その他部局等, 講師 (40265773) [辞退]
加茂 具樹  慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (30365499)
大島 一二  桃山学院大学, 経済学部, 教授 (40194138)
Wank David  上智大学, 国際教養学部, 教授 (60245793)
小嶋 華津子  慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (00344854)
諏訪 一幸  静岡県立大学, 国際関係学部, 教授 (50374632)
南 裕子  一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (40377057)
鈴木 隆  愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (50446605)
中岡 まり  常磐大学, 総合政策学部, 准教授 (80364488)
岡田 実  拓殖大学, 国際学部, 教授 (90738709)
呉 茂松  慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 准教授 (40612693)
福田 円  法政大学, 法学部, 教授 (10549497)
油本 真理  法政大学, 法学部, 教授 (10757181)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワード中国 / 腐敗 / 汚職 / 落馬 / 権力 / 党紀国法 / 腐敗圏 / 権・圏・銭シンドローム
研究実績の概要

腐敗が多領域に渉る錯雑な複合現象であることから、政治学、経済学あるいは社会学、犯罪学等の知見を糾合して、腐敗汚職に関する総合的な学術的検討を進めた。中国政治という大きな文脈の下、「権力社会」という概念をキーワードに「腐敗現象はどのように捉えられるべきか」という問いの下、中国腐敗学のあるべき基 本構造と分析アプローチを提示した上で、「どこで、どのような腐敗が生まれているのか」という問いから、人民代表選挙場面、対外援助、教育、建築業界等ビ ジネスの現場あるいは農村社会における権力と汚職のインターアクショナルな関係構造を検討した。とりわけ権力との関連では、反腐敗の側面にも注目し、 1989ー2021年期に腐敗に係る党紀国法違反で失脚した中央党・省の正副省長・省党書記など高級幹部360名の“落馬”リストの作成を試みている。その検討から、インフォーマルな文化伝統と規範に駆動された各個人が、フォーマルな制度の曖昧さと歪みの間を縫って権力を用い、諸個人間の相互行為のシス テムとして「腐敗圏」を構造化し、それが私的利益を追求する不正行為として顕在化した《権・圏・銭シンドローム》の存在を浮上させた。
こうした集団研究の成果からは、研究計画段階で当初設定した腐敗行為を「公権力による私的利益の追求」とする定義に何ら変更を加えるべき理由は見当たらないこと、また、現代中国における腐敗の猖獗と高成長の持続の同時成立をパラドクス視し、二項対立的に捉えることは事態を矮小化しかねないことが示唆され、寧ろ、腐敗行為の有するインセンティブとディスインセンティブの両側面およびそれによって形成される《権・圏・銭シンドローム》の検討こそが腐敗学の核心 テーマたるべきことが示唆されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

腐敗が多領域に渉る錯雑な複合現象であることから、政治学、経済学あるいは社会学、犯罪学等の知見を糾合して、引き続き廉政研究会を設け、腐敗汚職に関する総合的な学術的検討を進めた。「権力社会」という概念をキーワードに「腐敗現象はどのように捉えられるべきか」という問いを立て、中国腐敗学のあるべき基本構造と分析アプローチの検討を行なった。その上で、「どこで、どのような腐敗が生まれているのか」という問いから、人民代表選挙場面、対外援助、教育、建築業界等ビジネスの現場あるいは農村社会における権力と汚職のインターアクショナルな関係構造を明らかにすべく、個別検討を行った。とりわけ権力との関連では、反腐敗の側面にも注目し、財経網「近20年落馬高官一覧」、『当代中国研究』「習近平的打虎行動:反腐敗運動還是派系清洗?」、百度百科、『政法論壇』「腐敗利益連的成因与阻断」、「18大以来落馬高官分析報告」『領導決策信息』等の中国側公刊資料に基づき、1989年~2021年期に腐敗に係る党紀国法違反で失脚した中央党・省の正副省長・省党書記など高級幹部360名の“落馬”リストの作成を目指した。その“落馬”高官一覧の再構成作業から、インフォーマルな文化伝統と規範に駆動された各個人が、フォーマルな制度の曖昧さと歪みの間を縫って権力を用い、諸個人間の相互行為のシステムとして「腐敗圏」を構造化していることを浮上させることができた。他方、フィールドサーベイ等現地調査がコロナ禍等により実施不能が続いているが、これを相殺する研究作業が進行していることから、概ね順調に進展しているものと判断される。

今後の研究の推進方策

廉政研究会において、中国政治という大きな文脈の下、「腐敗現象はどのように捉えられるべきか」という問いを掲げ、「権力社会」という概念をキーワードに、中国腐敗学のあるべき基本構造と分析アプローチを引き続き検討する。その際、中国側研究パートナーとの連携を深めつつ、これまで実施を余儀なくされてきた現地派遣調査を行うことで、人民代表選挙場面、対外援助、教育、建築業界等ビジネスの現場あるいは農村社会における権力と汚職のインターアクショナルな関係構造の分析を深化させることとしたい。
また、反腐敗の側面にも注目した高級幹部の“落馬”データの作成については、別記の通り、百度百科、財経網、『当代中国研究』、『政法論壇』、『領導決策信息』等の中国側公刊資料のほか、中国側協力機関と協働による現地調査を通じて、1989年~2021年期に腐敗に係る党紀国法違反で失脚した中央党・省の正副省長・省党書記など高級幹部の“落馬”状況の詳細に迫る。
更に、それらデータからは、フォーマルな制度の曖昧さと歪みの間を縫って権力を濫用する「腐敗圏」が浮上するが、権力と親密圏が私的利益追求にリンクした《権・圏・銭シンドローム》という不正行為を形成することを論証してゆくことする。

  • 研究成果

    (31件)

すべて 2022 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) 図書 (8件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 習近平:ひよわなポピュリスト?2022

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 雑誌名

      東亜

      巻: 2022年3月号 ページ: 78 - 85

  • [雑誌論文] Governance から治理へ:<党治理>への収斂2022

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 雑誌名

      中国21

      巻: 第57号 ページ: 41-64

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 日本のODA発展史から見た腐敗と反腐敗2022

    • 著者名/発表者名
      岡田実
    • 雑誌名

      国際開発学研究

      巻: 第21巻第2号 ページ: 1-35

  • [雑誌論文] 書評 ■学偉著『現代中国の社会と行動原理――関係・面子・権力』2022

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 雑誌名

      中国研究月報

      巻: 第895号 ページ: 36-40

  • [雑誌論文] 中国における農村労働力の 出稼ぎの実態と課題 : 河南省淮浜県C村における農家調査から2022

    • 著者名/発表者名
      楊嘯宇・大島一二
    • 雑誌名

      桃山学院大学経済経営論集

      巻: 64 (2) ページ: 45-66,

  • [雑誌論文] 中国における失地農民の就業安定政策の課題 : 山東南四湖省級自然保護区の「退養漁湖民」を対象として2022

    • 著者名/発表者名
      鮑萌・大島一二
    • 雑誌名

      桃山学院大学経済経営論集

      巻: 63 (3) ページ: 81-106

  • [雑誌論文] 行政機関:国務院2022

    • 著者名/発表者名
      諏訪一幸
    • 雑誌名

      川島真・小嶋華津子編著『よくわかる現代中国政治』、ミネルヴァ書房

      巻: - ページ: 34-35

  • [雑誌論文] 党内民主から指導者面談へ2022

    • 著者名/発表者名
      諏訪一幸
    • 雑誌名

      愛知大学現代中国学会編『中国21』

      巻: - ページ: 65-92

  • [雑誌論文] 強硬姿勢を強める習近平外交2022

    • 著者名/発表者名
      諏訪一幸
    • 雑誌名

      古賀俊臣編『治安フォーラム』、立花書房

      巻: - ページ: 30-39

  • [雑誌論文] 党・国家体制2021

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 雑誌名

      川島真・小嶋華津子編著『よくわかる現代中国政治』、ミネルヴァ書房

      巻: - ページ: 42-43

  • [雑誌論文] 乱反射する《AはXか?》2021

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 雑誌名

      研究中国

      巻: 第11号(通巻131号) ページ: 64-66

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 安心立命のパノプティコン? ―ポストコロナ社会のゆくえ2021

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 雑誌名

      朱建榮編著『加速する中国/岐路に立つ日本 : ポストコロナ時代のアジアを考える』花伝社

      巻: - ページ: 91-114

  • [雑誌論文] 中国のインフラ建設プロジェクトにおける腐敗リスクと公共調達関連法2021

    • 著者名/発表者名
      岡田実
    • 雑誌名

      国際開発学研究

      巻: 第20巻第2号 ページ: 1-22

  • [雑誌論文] 書評:大塚健司著『中国水環境問題の協働解決論――ガバナンスのダイナミズムへの視座――』2021

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 雑誌名

      アジア経済

      巻: 62 巻 3 号 ページ: 101-105

  • [雑誌論文] 中国の対外援助改革と反腐敗―公共調達制度整備の視角から―2021

    • 著者名/発表者名
      岡田実
    • 雑誌名

      国際開発学研究

      巻: 第21巻第1号 ページ: 37-62

  • [雑誌論文] リプセットの幻影――全面小康社会の中の“中間層”2020

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 雑誌名

      『研究中国』

      巻: 第11号(通巻131号) ページ: 13-24

  • [学会発表] 習近平:ひよわなポピュリスト?2022

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 学会等名
      内閣府 中国政治経済研究会
  • [学会発表] 習近平の悪夢:DX大衆社会の権力者2022

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 学会等名
      霞山会 午餐会
  • [学会発表] 最高権力者の懊悩:政敵・内敵・外敵2022

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 学会等名
      アジア経済研究所
  • [学会発表] 習近平の孤独と苦悩2022

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 学会等名
      浩志会
  • [学会発表] 習近平の懊悩2022

    • 著者名/発表者名
      菱田雅晴
    • 学会等名
      アジア共創塾
  • [学会発表] 中国の腐敗に関する客観的なデータの収集方法2022

    • 著者名/発表者名
      馬嘉嘉
    • 学会等名
      『なじまぁ』(立教大学アジア地域研究所)
  • [図書] 加速する中国/岐路に立つ日本 : ポストコロナ時代のアジアを考える2021

    • 著者名/発表者名
      朱建榮
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      花伝社
    • ISBN
      978-4763409768
  • [図書] よくわかる現代中国政治2021

    • 著者名/発表者名
      川島真・小嶋華津子
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      978-4623086719
  • [図書] 現代中国 内政と外交2021

    • 著者名/発表者名
      毛里和子
    • 総ページ数
      240
    • 出版者
      名古屋大学出版会
    • ISBN
      978-4815810351
  • [図書] 中国のロジックと欧米思考2021

    • 著者名/発表者名
      天児慧
    • 総ページ数
      272
    • 出版者
      青灯社
    • ISBN
      978-4862281180
  • [図書] 超大国 中国のあゆみ2021

    • 著者名/発表者名
      厳善平
    • 総ページ数
      260
    • 出版者
      晃洋書房
    • ISBN
      978-4771034426
  • [図書] ミクロデータからみる現代中国の社会と経済2021

    • 著者名/発表者名
      厳善平
    • 総ページ数
      277
    • 出版者
      勁草書房
    • ISBN
      978-4326504879
  • [図書] 証言 戦後日中関係秘史2020

    • 著者名/発表者名
      天児 慧、高原 明生、菱田 雅晴
    • 総ページ数
      326
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784000614016
  • [図書] 現代中国ゼミナール: 東大駒場連続講義2020

    • 著者名/発表者名
      東京大学社会科学研究所現代中国研究拠点
    • 総ページ数
      224
    • 出版者
      東京大学出版会
    • ISBN
      978-4130230766
  • [備考] 資料庫:中国落馬高官リスト

    • URL

      https://note.com/light_dunlin834/n/nf8958050f5e8

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公開日: 2023-12-25  

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