研究課題/領域番号 |
17H01834
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大野 美紀子 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 助教 (80406701)
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研究分担者 |
笹川 秀夫 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (10435175)
宮沢 千尋 南山大学, 人文学部, 教授 (20319289)
武内 房司 学習院大学, 文学部, 教授 (30179618)
木谷 公哉 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 助教 (50324687)
菊池 陽子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60334447)
小島 浩之 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (70334224)
岩月 純一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80313162)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地域情報化 / 地域研究 / インドシナ / 出版史 / 情報図書館学 |
研究実績の概要 |
研究目的の「東南アジア逐次刊行物総合目録データベース(以下DB):インドシナ3国版」を整備し、その網羅的な資料情報(書誌・所蔵情報)を利用して、インドシナ3国の近現代社会史研究において重要な「出版思潮」(及びこれにまつわる制度・技術)について、数量的なエビデンスの裏付けの元に明らかにすること、また、逐次刊行物資料情報の地域研究への応用に係る新たな方法論の提言に繋げることについてである。本研究は、この間に、2つの調査班による研究活動に収斂してきた。 第1班は、インドシナ3国内資料調査に基づき、逐次刊行物DBへの資料情報収録・情報整備を進めている。遅延していたカンボジア逐次刊行物について、昨夏同国主要図書館の横断調査を行い、国立図書館、国立公文書館、王立プノンペン大学フンセン図書館の協力を得て逐次刊行物資料情報を収集した。また、ラオス国内で補足資料調査を行うとともに、ラオス国立大学中央図書館において本プロジェクト関連報告会及び当該DBの技術供与を行った。新たに収集した資料情報は逐刊DB:インドシナ3国版(https://info.cseas.kyoto-u.ac.jp/db/sealib-dev/)に収録・公開した。 第2班は、オリジナル史資料の物的特性分析を通じてインドシナ3国-アジア域出版思潮に係る製本・印刷技術面の史的展開を考察する試みに着手している。現在オリジナル文書の試料分析を許可する機関は極めて少ない中で、幸いにも京都大学東南アジア地域研究研究所が所蔵する19世紀後半以降の大乗仏教典ほか史資料104点について料紙分析を行う機会を得てその作業をほぼ終了し、料紙と史料成立年代の相関性を検討する過程に入りつつある。京都大学アカデミックデイ2018及び漢字文献情報処理研究会第21回大会において、この中間報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「東南アジア逐次刊行物総合目録DB:インドシナ3国版」構築・資料情報収録については、インドシナ3国内主要な機関図書館との協力関係をすでに構築しており、逐次刊行物資料情報を継続的に得ることが可能となっている。これまで調査が遅延していたカンボジアについても、昨夏の横断調査以来同国主要図書館との協力関係が急速に深まり、6月中旬に国立図書館・王立プノンペン大学等主要図書館のスタッフを日本に招聘して情報交換を行い、さらなる機関間協力を進める予定である。いずれの国々も書誌・所蔵を収録する図書館DBの構築途上にある中で、ベトナムでは自国内で主要研究機関、国立図書館とも総合目録DBを構築・公開しており、本研究協力機関である社会科学通信院によってベトナム人文社会アカデミー傘下32図書館の横断型DB構築が進展している。当該DB構築によって、全国規模の資料情報収集が容易になることが見込まれる。 また、オリジナル史資料調査班では、文書目録作成及び物的特性調査をほぼ終了しており、若干の補足調査を終えた後報告書とりまとめへ移行しつつある。関連する中間報告は、漢字文献情報処理研究会・京大アカデミックデイ・東南アジア学会関西例会で公開されている。
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今後の研究の推進方策 |
インドシナ3国における資料調査において、各国の図書館制度・出版概況の相違による図書館DB構築と収録資料情報の諸課題を認識しつつある。いずれの国とも国際機関援助を介してMARC21図書館DB仕様が導入されているが、資料種別などデータ項目の欠が多く、したがって、逐次刊行物資料情報のみをDBから抽出する作業が困難であり、調査者による書誌同定作業が必須となっている。各国の書誌コントロールが甘い背景には、日本・欧米諸国に比して各図書館の所蔵資料が圧倒的に少ないこと、フリーキーワード検索志向が根強いことが挙げられる。しかしながら、経済発展に伴い出版物刊行量・図書館所蔵量が増加していく中で、今後一層の資料情報の精度向上が求められる。課題解決のため、本年9月ハノイにおいて本研究班とベトナム社会科学通信院共催により、インドシナ3国対象機関図書館に対する書誌コントロール技術研修ワークショップを開催し、日本―インドシナ3カ国間で情報共有・課題検討を行う予定である。の課題を検討する予定である。これによって、将来に渉り3カ国の協力機関が自律的に逐次刊行物資料情報更新し、日本側機関がその情報を利用可能にしていきたい。オリジナル史資料調査班もまた9月WSに参画し、資料情報と資料保存の2点における整備の重要性を協力機関間において共通認識とする。 2班とも、インドシナ3国のみならず、日本においても、実務担当者の目録・資料保存研修スキームの必要性を近年痛感しており、そのスキーム構築を念頭に置き、9月ハノイWSで試験例を実施する。WS成果は、参加各機関と協力して各国の逐次刊行物資料概要及び図書館紹介の報告書を作成・公開予定である。
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