研究課題/領域番号 |
17H02350
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
庵 功雄 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 教授 (70283702)
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研究分担者 |
イ ヨンスク 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 教授 (00232108)
松下 達彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00255259)
豊田 哲也 青山学院大学, 理工学部, 助教 (30650618)
志村 ゆかり 関西学院大学, 日本語教育センター, 講師 (50748738)
宮部 真由美 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 日本語教育研究領域, プロジェクトPDフェロー (60823383)
早川 杏子 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 特任講師 (80723543)
田中 牧郎 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (90217076)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | やさしい日本語 / JSL生徒 / 総合日本語教科書 / ろう児 / 対照言語学 / 言語政策 / 漢字教育 / コーパス |
研究実績の概要 |
令和元年度は、日本の公立中学校でのフィールドワークを通した教材開発の成果として、外国につながる生徒のための日本語総合教科書(初級版、初中級版)を刊行し、その概要と具体的なアプローチについて、口頭発表を行った。 JSL児童生徒のための漢字シラバス開発に資するべく、中学校教科書コーパスから漢字の音訓使用率を算出し、文理教科書における漢字情報の使用傾向の対照分析を行い、論文による成果報告を行った。また、非漢字圏のJSL児童生徒あるいは成人日本語学習者の効果的な漢字字形学習方法を探るために、彼/彼女らの漢字字形認知の様相を明らかにする目的で、漢字の構造と構成要素を軸に初見漢字の再認実験と漢字要素分解調査を行い、口頭発表によって報告を行った。 ろう児に対する日本語教育の実践を続ける一方、日本語と日本手話の対照研究を続け、口頭発表で報告した。 日本語学習教材の自動生成方法について検討し、言語処理分野の機械学習モデル「Word2Vec」を用いた類義語を用いて、日本語能力テストの多肢選択問題を構築する手法を検討する一方、学術共通語彙知識の発達やその読解力との関係についての横断的調査を行った。さらに、学習者の語彙力測定のためにWebブラウザから語彙情報を収集するフレームワークを提案し、学習者が登録した語彙から関連語彙を「Word2Vec」を用いて推定し、日本語学習教材の自動構築に役立てる仕組みを検討した。 「やさしい日本語」の理念の拡張について考究するとともに、講演、新聞や雑誌への寄稿などを通して、「やさしい日本語」の理念の地域社会への普及に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度までの3年間において、JSL生徒向けの日本語教育に関しては、総合日本語教科書を3分冊中の2冊刊行し、3冊目に関しても編集を順調に進めている。 ろう児に対する日本語教育に関しては、格助詞の導入について一定の成果を挙げるとともに、日本語と日本手話の対照研究についても新たな知見が得られている。その知見は、日本手話引き日本語基本動詞辞典開発にも活かされるものである。 JSL生徒に対する漢字教育を抜本的に改善するために、前述の総合日本語教科書作成のために作成した教科書コーパスの分析を進め、中学校教科書における漢字使用の実態を明らかにし、漢字教育のための新たな漢字シラバス作成の指針を作成した。 日本国内各地での講演やワークショップの開催および、書籍や学術論文の刊行、新聞や雑誌への寄稿などを通して、「やさしい日本語」の理念の拡張や理念の普及に勤めた。 これらの点において、本研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は本研究の最終年度に当たる。令和2年度においては、JSL生徒向けの総合日本語教科書作成班は、本教科書(3分冊の3冊目)とe-learning教材との「棲み分け」のあり方を含む教材の理念に関する考究と教材のプロトタイプの作成を行う。 ろう児に対する日本語教育研究班は、日本語と日本手話の対照研究を続けるが、その際、音声言語と手話言語の共通点と相違点という観点をより積極的に取り入れる。また、これまでの研究において、手話言語である日本手話において品詞が持つ意味合いと、音声言語におけるその意味合いの間にかなりの質的相違が見られることが明らかになってきているため、この点について一般言語学的観点から考究するとともに、そうした際が言語理解にもたらす影響について具体的に考察した内容について口頭発表を行う。 漢字教育に関する質的見直しを行うために、これまで行ってきた調査内容を整理し、そこから導き出される結論について、別の調査によって検証する。 「やさしい日本語」の理念を日本社会に普及するための方策を考究し、論文執筆、講演その他の手段によって、その内容を公刊する。
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備考 |
これら2つのHPにおいて、本科研の研究成果を随時公開している。
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