研究課題/領域番号 |
17H02476
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
辻 康夫 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (20197685)
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研究分担者 |
常本 照樹 北海道大学, 法学研究科, 教授 (10163859)
木部 尚志 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10310327)
新川 敏光 法政大学, 法学部, 教授 (30216212)
浪岡 新太郎 明治学院大学, 国際学部, 教授 (40398912)
樽本 英樹 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (50271705)
五野井 郁夫 高千穂大学, 経営学部, 教授 (50586310)
吉田 徹 北海道大学, 法学研究科, 教授 (60431300)
山崎 望 駒澤大学, 法学部, 教授 (90459016)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多文化主義 / ポピュリズム / 排他主義 / 移民 / 先住民 / マイノリティ |
研究実績の概要 |
民族的・文化的マイノリティの文化・コミュニティを尊重しつつ全体社会への統合をはかる、穏健な多文化主義政策は、マイノリティのみならず社会全体にも有益なものとして、政策実務のレベルで支持を広げている。他方、近年のポピュリズムや排他主義の高揚は、しばしばマイノリティに対する敵意をかきたて、多文化主義政策の推進を妨げ、社会全体の利益を損なう危険がある。本研究は、この障害を克服する鍵を、熟議を通じた理解の成熟に求め、それを推進する条件を政策決定過程にそくして解明することをめざしている。2年目にあたる2018年度は、初年度の作業をふまえつつ、以下のような作業を行った。第一に、初年度に引き続いて、文献のリストの作成とその収集の作業をすすめた。第二に、初年度に設定した枠組みに従って、各国の政治状況・政策の検討を進めた。7月に昨年度末以来の作業の成果を持ち寄って全体研究会を開催し、集中的な議論を行った。この議論をとおして、多数派政治のレベルにおいて多文化主義と、これを代替する傾向のある多様性のシンボルの機能に共通性とともに重要な差異がみられること。都市の公共空間における芸術表現をつうじた包摂の試みが、多文化主義の目的から見て可能性とともにリスクをはらんでいること。審議会のような熟議のための自律的空間を保持することが困難になり、ポピュリズムへの矯正装置としての機能を低下させている事例がみられること。市場のもつ両義性を、これらの諸要因と結びつけて考察する必要があること、などの認識を得た。また各研究者が海外出張などの機会をとらえて海外研究者との交流を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に予定したのは、第一に本研究に必要な資料および研究文献の収集、第二に、ポピュリズム、排他主義、多文化主義の関係について昨年度に抽出した論点について、理論的、実証的研究をすすめることであり、おおむね予定通りの進捗がみられた。また全体研究会を開催して、集中的討論を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、最新の文献レビューは昨年度に引き続いて作業をすすめる。また、昨年度得られた知見をふまえて、とくに新自由主義の経済システムとの関係において、熟議を可能にする諸制度の維持の可能性、新自由主義と差異の尊重との関係、多様性のシンボルの機能などの論点を手掛かりにして、理論的手法および各国の事例分析の両面から、考察をおこなう。春から夏にかけては、各メンバーが分担して国内作業を行い、夏季から秋にかけては、休暇等を利用して、海外における調査および、海外研究者との交流を行う。年度の後期は、これらの成果をふまえて、全員による研究会を実施し、あわせて外部の研究者との交流をつうじて、研究の取りまとめの方向性を固める。2020年度は理論研究に重点をおいて取りまとめの作業を行う。
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