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2019 年度 実績報告書

社会ゲームの理論と実験:自発的規律付けと多様な戦略の併存の含意と国際比較

研究課題

研究課題/領域番号 17H02501
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

グレーヴァ 香子  慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (10219040)

研究分担者 中泉 拓也  関東学院大学, 経済学部, 教授 (00350546)
西村 直子  信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (30218200)
松井 彰彦  東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30272165)
藤原 正寛  東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 名誉教授 (40114988)
鈴木 伸枝  駒澤大学, 経済学部, 教授 (90365536)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード社会ゲーム / 実験 / 協力 / 寛容 / 国際比較
研究実績の概要

理論論文は研究が進んだため2つの論文に分けて、ナッシュ均衡の存在だけを扱った論文と、進化的安定性を扱った論文にする方向で進めた。進化的安定性の論文では寛容均衡だけでなく、対照的2戦略均衡という協力的なプレイヤーと利己的なプレイヤーしかいないものも分析でき、しかもこれがもっとも安定であるという結論が出た。このとき使用する安定性概念として、スタンダードな概念である中立的安定性を多数戦略均衡に適用することにも成功した。この部分はグレーヴァが国際学会で報告した。また寛容均衡のロジックは段階ゲームが囚人のジレンマでなくても成立することが明らかになり、一般の社会ゲームの分析の糸口となることがわかった。

国内実験の分析においては理論論文が主張している、多様な戦略の共存、マルコフ的ではない行動パターン、裏切られたらやめるという行動(パートナーシップを続けて利己的に行動するのではない)などがデータから見られることがわかった。これらはどれも通常の繰り返し囚人のジレンマ実験で支配的に観察されるものとされていたので、自発的に継続するという環境が本質的に異なる行動を誘発していることがわかった。また、理論では結論が出ていなかった、自発的継続モデルで協力率は高まるのか、という最大の問題については、高まるという結論に至った。しかし、その要因については理論的課題となっている。戦略分布の分析においては、理論値そのものとは異なるが、寛容均衡の6つの均衡戦略に「内的バランス」があるという点では理論を支持する結果を得た。3期間の行動履歴パネルによる戦略分布の計算も、最尤法とそろえて最初の3期間のデータを除いたものでやり直し、全データのときとほぼ同じ結果を得た。国際実験においては、2019年9月にバンコクのモンクット王工科大ラートクラバン校とイスラマバードのパキスタン開発経済大学院でそれぞれ実験を行なった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

国際実験のデータ収集は、国内実験と比較可能な数となり、さらにタイでの実験も加わった。理論論文では安定性の概念が大幅に改善された。しかし強い安定性を考えたために、多数の戦略が共存する寛容均衡の分析はより難しくなったとは言える。そのせいもあり、まだトップジャーナルに投稿できる形に到達していない。実験論文は、やっと多くの疑問に対する答えが出て来たので、あとはうまく執筆するという段階に来た。

今後の研究の推進方策

自発的継続囚人のジレンマモデルの理論論文の完成を急ぎ、国際学術誌に投稿する。また、一般の社会ゲームにも応用できる「寛容」のロジックについて新たな論文を考える。グレーヴァ、藤原、鈴木は寛容のロジックを中心としてこれまでの10年以上の共同研究の集大成として和書の執筆も始めている。実験論文はグレーヴァと西村で執筆を進めて行く。国際実験のデータ整理は中泉を中心にRAと鈴木で進めて行く。整理が終われば統計的分析は国内実験と同じものをやればよいだけになっている。

備考

Naoko Nishimura他2名 “Voluntary Redistribution Mechanism in Asymmetric Coordination Games," ISER, working paper, 2019.
西村直子他4名「長野県松本市におけるフューチャー・デザインの研究と実践」信州大学経法学部 Staff Paper SS.19-01, 2020年3月31日

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 7件、 招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] パキスタン開発経済大学院(パキスタン)

    • 国名
      パキスタン
    • 外国機関名
      パキスタン開発経済大学院
  • [国際共同研究] モンクット王工科大学ラートクラバン校(タイ)

    • 国名
      タイ
    • 外国機関名
      モンクット王工科大学ラートクラバン校
  • [雑誌論文] インスタグラムの「いいね」の数の決定要因に関するランダム化比較試験2020

    • 著者名/発表者名
      中泉拓也
    • 雑誌名

      関東学院大学経済経営研究所年報

      巻: 42 ページ: -

  • [雑誌論文] Impact of Copyright Protection on Re-creation of Digital Contents When Expression and Idea are Divisible2019

    • 著者名/発表者名
      Takuya Nakaizumi
    • 雑誌名

      Contemporary Issues in Applied Economics -Ten Years of International Academic Exchanges Between JAAE and KAAE

      巻: - ページ: 89-97

    • DOI

      10.1007/978-981-13-7036-6_5

  • [雑誌論文] General or firm-specific training under contractual incompleteness2019

    • 著者名/発表者名
      Takuya Nakaizumi
    • 雑誌名

      Conference Proceedings of 2018 Annual Meeting of the Korean Association of Applied Economics

      巻: - ページ: -

  • [雑誌論文] Acquisition of General Human Capital for Developing Entrepreneurship2019

    • 著者名/発表者名
      Takuya Nakaizumi
    • 雑誌名

      Urban Studies and Entrepreneurship: How can Cities Foster Entrepreneurship?

      巻: - ページ: 77-90

    • DOI

      10.1007/978-3-030-15164-5_5

    • 査読あり
  • [学会発表] On Evolutionary Stability of the Fundamentally Asymmetric Equilibrium2019

    • 著者名/発表者名
      Takako Fujiwara-Greve
    • 学会等名
      Conference on Learning, Evolution, and Games 2019
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Future Design in Matsumoto - Excitement, Far-sighted, and Objective Thinking2019

    • 著者名/発表者名
      Naoko Nishimura
    • 学会等名
      Future Design
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 松本市のフューチャー・デザイン2019

    • 著者名/発表者名
      西村直子
    • 学会等名
      フューチャー・デザイン‐実践の現場から
    • 招待講演
  • [学会発表] Social risk and risk Attitude2019

    • 著者名/発表者名
      西村直子
    • 学会等名
      第23回実験社会科学カンファレンス
    • 国際学会
  • [学会発表] 2つの異なるリスク姿勢測定から見た将来世代思考2019

    • 著者名/発表者名
      西村直子
    • 学会等名
      第23回実験社会科学カンファレンス
    • 国際学会
  • [学会発表] Future Design in Matsumoto: Excitement, Farsighted, and Objective Thinking2019

    • 著者名/発表者名
      西村直子
    • 学会等名
      第23回実験社会科学カンファレンス
    • 国際学会
  • [学会発表] Disability and Economy2019

    • 著者名/発表者名
      Akihiko Matsui
    • 学会等名
      東京フォーラム2019
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 現代社会と行動様式の多様化:自発的長期関係における寛容の役割2019

    • 著者名/発表者名
      奥野(藤原)正寛
    • 学会等名
      日本政策投資銀行設備投資研究会
  • [学会発表] Voluntary Partnerships, Tolerance and Cooperation: An Experimental Study2019

    • 著者名/発表者名
      Nobue Suzuki
    • 学会等名
      アジア成長研究所「財政学に関するコンファレンス」
    • 国際学会
  • [図書] Economy and Disability2019

    • 著者名/発表者名
      Matsui, Akihiko
    • 総ページ数
      236
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-981-13-7622-1
  • [備考] グレーヴァ科研費プロジェクトのページ

    • URL

      http://web.econ.keio.ac.jp/staff/takakofg/kakenhp.html

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公開日: 2021-01-27  

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