研究課題/領域番号 |
17H02625
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
永田 素彦 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60271706)
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研究分担者 |
李 永俊 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (10361007)
伊藤 哲司 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (70250975)
渥美 公秀 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (80260644)
河村 信治 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80331958)
宮本 匠 兵庫県立大学, 減災復興政策研究科, 講師 (80646711)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 社会現象 / 災害復興 / アクションリサーチ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、被災コミュニティの内発的復興を支える関係性の様態を、アクションリサーチを通して明らかにすることである。(1)東日本大震災の被災地である野田村の住民を対象とした質問紙調査の結果、被災前と比べて前向きな生活を送っているか否かに大きく関連しているのは、震災をきっかけとした「重要な他者」との出会い、および、震災前後での村外の人々や地域の仲間との付き合いの増減であることが明らかになった。(2)野田村および熊本地震の被災地である西原村では、コミュニティ復興に向けた内発的な動きが生まれている。そのような動きの一つとして、野田村で震災後に発足した地域づくりNPOを対象としたフィールド調査を行い、内発的復興にとって、外部支援者とのコンサマトリーな関わりが重要であることが明らかになった。(3)震災後にできた新興コミュニティづくりにおいては、日常的な支援-受援関係、教える-教わる関係のような能動-受動の関係性を逆転ないし脱構築させるような介入が、内発的復興に対して効果的であることが示唆された。(4)コミュニティの将来ビジョンづくりのまちづくりワークショップについては、昨年度に続いて、さまざまな生業体験やフィールドワークに基づいて学生が地域づくりの提案を作成し、野田村住民との意見交換会を実施した。また、震災前のコミュニティの姿を共有することを目的として、震災前のコミュニティの写真を題材としたワークショップを試行的に実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)住民主導のコミュニティ復興について、野田村、西原村とも事例を詳しく調べることができた。(2)西原村における生活復興感の調査については、当初の予定どおり実施することができなかった。2019年度は、住宅の復興状況を勘案しながら、インタビュー調査を実施する。(3)新興コミュニティづくりのアクションリサーチについては、野田村の一つの新興団地をフィールドに、地域づくりへの介入的実践を行うとともに、そのような介入を継続的に行っていく関係性を整えることができた。(4)将来ビジョンづくりのアクションリサーチについては、ほぼ予定通り実施できた。(5)西原村における調査が遅れているため、2つの被災地を比較した検討も遅れている。 以上を総合して、当初の研究計画と比べて、やや遅れていると考える。ただし最終年度に十分回復可能な程度である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)新興コミュニティづくりのアクションリサーチ:野田村では複数の新興コミュニティが誕生し、コミュニティとしての求心性をいかに実現していくかが課題となっている。また、村としても地方創生総合戦略をふまえてポスト復興期の地域づくりが課題となっている。2019年度は、昨年度に引き続いて、新興コミュニティづくりを促す介入的実践を行うほか、住民や役場職員と協同での復興むらづくりワークショップを行う。 (2)内発的復興過程の質的調査:これまでの調査で、熊本県西原村のいくつかの集落では興味深い形で内発的復興が進捗してきたことが明らかになった。また、野田村においても、外部者との交流を軸とした内発的復興の事例が見られた。これらの事例から内発的復興を支える関係性の様態を明らかにするために、インタビューを主とした質的調査を行う。 (3)復興感とその関連要因に関する調査:これまでの調査で、被災後の生活復興感(被災前と比べて、前向きな生活をできているか否か)に大きく関連しているのは、被災後の重要な他者との出会いであることが明らかになった。2019年度は調査結果の分析をさらに進めるとともに、補充的な調査を行う。 (4)内発的復興を支える関係性の様態の理論的検討:これらの研究結果を総括して、主に活動理論やそれに基づく越境論に依拠しつつ、内発的復興を支える関係性の様態の理論的検討を行う。
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