研究課題/領域番号 |
17H02858
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 佳正 京都大学, 情報学研究科, 教授 (50172458)
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研究分担者 |
木村 欣司 京都大学, 情報学研究科, 特定准教授 (10447899)
關戸 啓人 京都大学, 国際高等教育院, 特定講師 (40718235)
前田 一貴 関西学院大学, 理工学部, 助教 (80732982)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 部分特異値分解 / 大規模スパース行列 / ランチョスアルゴリズム / QR分解 |
研究実績の概要 |
本研究の目的[B]に沿って,データ行列の主成分分析のための特異値問題について様々なアプローチを行った.並列化効率の高い櫻井・杉浦法は左特異ベクトルのみを用いて計算を行うため直交QD法と相性が良い. そこで,櫻井・杉浦法に組み込むことを念頭において,その前段階として,直交QD法を実装して高い相対精度で微小な特異値や零空間が計算するコードを開発し,研究室のウェブページにて公開して数件のダウンロードがあった. さらに,目的[B]に関連して,スパースな大規模データ行列の部分特異対を計算するため,リスタートによってランチョスベクトルの直交性と悪化を防ぐ改良型陰的リスタートランチョス法による2重対角化の研究を行った.従来法であるハウスホルダー反射行列によるQR分解を利用せずに,部分行列の左右の特異ベクトルの直交性を保つアルゴリズムを開発した結果,単精度計算においては,従来法より計算時間を短縮するとともに,部分特異値分解の精度を向上させることができた. また,箱玉系の拡張ルールとして玉に番号をつける拡張,運搬車の容量を制限する拡張があるが,本研究の目的[A]として,この両方の拡張を持つ,既知のものとはまた別の一般化を導入することができた.これによって帯幅が2以上のTN行列の固有値に収束するフローをもつ非自励離散可積分系とその非自励離散KP格子や非自励離散2次元戸田格子との関係の理解が進んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[A] 帯幅が2のTN行列の固有値に収束するフローをもつ非自励離散可積分系の探求について継続して研究している. [B] 直交QD法による高精度な特異値分解計算の実装コードの開発と公開は予定通り進んだ.さらに,改良型陰的リスタートランチョス法による2重対角化(augmented implicitly restarted Lancos bidiagonalization method)の開発ができた. [C] 可積分アルゴリズムによるランチョスパラメータの計算においてはゼロ割に起因するブレイクダウンが発生しても高次の離散可積分系によって特異点を回避できることを確認するという成果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
[A] TN帯行列としての4重対角,および5重以上のヘッセンベルグ行列を取り上げ,dhToda型可積分系の解構造に着眼して陽的な原点シフト法を導入して高速・高精度な新しい可積分アルゴリズムを開発する. [B] ハウスフォルダー2重対角化で前処理しQR法で特異ベクトルを計算する従来法と,ハウスフォルダー2重対角化で前処理しdqds法で特異値を直交QD法で特異ベクトルを計算する提案手法の比較を櫻井・杉浦法に組み込んで比較検討する. [C] ランチョス法に基づく連分数展開とハンケル行列のコレスキー分解の高速計算法であるランチョス・フィリップスアルゴリズムに注目し,その可積分アルゴリズムとしての性質を明らかにするとともに,ティープリッツ行列のLU分解の高速計算法としてランチョス・フィリップス型アルゴリズムを定式化することで,単位円周上の直交多項式やローラン双直交多項式を通じて,ブレークダウンを回避したパデ展開の計算法を開発する.
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