研究課題/領域番号 |
17H03358
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩田 司 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (70356062)
|
研究分担者 |
MALY Elizabeth 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (00636467)
内田 晃 北九州市立大学, 地域戦略研究所, 教授 (60438299)
井内 加奈子 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (60709187)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 木造応急仮設住宅 / 地域住宅計画 / 地域運営 / 国際比較 / 仮設住宅の転用 |
研究実績の概要 |
1)木造応急仮設住宅建設の判断基準:阪神・淡路大震災、雲仙普賢岳噴火災害、中越地震、東日本大震災、熊本地震を対象とし、応急仮設住宅の型別供給戸数と年度別使用戸数を調べ、災害規模と種類に応じた応急仮設住宅の建設の問題点(気候、敷地の準備に係わる関係、集団移転の有無、避難者の人口・世帯属性等によるもの)を整理し、供給の判断基準を整理した。特に熊本地震における木造応急仮設住宅の復興住宅への転用の可能性について熊本県へのヒアリングを行い、制度上、建築確認申請を伴わない仮設建築の場合でも、建築基準法第6条の運営の解釈によって、復興住宅として再利用可能なこと、公営住宅の基準に合わせるための2戸1化が不可能な場合、一般の公共団体が運営する小規模住宅として転用が可能であることがわかった。 2)木造応急仮設住宅の仕様:福島県の木造応急仮設住宅をその主な仕様(工構法、価格)により類型化し、それぞれの累計毎の劣化状況を福島県の調査結果から整理した。この結果から5年以上の長期間使用するためには、簡易なコンクリート基礎を活用する必要があること、または解体した上で再建築をする必要があることがわかった。なおこの結果に基づき、会津若松市において、仮設住宅を解体し、災害公営住宅として再建築した結果、部材で60%再利用が可能であることがわかった。 3)制度・立地条件:四川大震災後の復興計画に基づく仮設住宅供給の概要についての現地調査を行い、供給体制、運用手法、制度(根拠法)等を整理した。またその後の復興計画の進捗状況も合わせて調査し、日本とは違い、壊れた建物の部材を積極的に活用すること、また元々の街並み景観の再生を積極的に行い、6次産業化などによる観光開発を行って、地域の活性化を図っている実態が確認できた。このことは今後の我が国の復興計画に大いに参考になると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査において、イタリア、アメリカ側の準備の都合で、イタリア調査は平成30年度、アメリカ調査は平成31年度に変更となった。そのため、平成29年度は中国における四川大震災後の応急仮設住宅の調査を行った。なお、四川大震災から平成30年で10年となるため、併せて住宅や町の復興状況も調査することができ、大きな成果を得ることができた。 また本研究は、福島県、熊本県の協力の下に進めており、その関係で会津若松市における木造応急仮設住宅の解体時の材料を再利用した災害公営住宅への再建築の調査を行うことができ、本研究の目的の一つである木造応急仮設住宅の再利用に関する実質的な現場での調査も行うことができた。 以上のような変更点はあるものの予定通り進捗しており、また転用等は福島県を中心に実際に進行しており、今後も含め、当初の研究の内容を実態的に研究することに成功している。
|
今後の研究の推進方策 |
1)木造応急仮設住宅建設の判断基準:地域の住宅生産体制に基づく地域に根ざした住宅計画の策定と実践を目的とした昭和58年度から約200市区町村で実施された「地域住宅計画」、及び平成28年度に見直された各都道府県の「住生活基本計画」から、地域の住宅生産体制と木材供給の実態を、林業統計等を参考に整理する。これらを基に地域毎の木造応急仮設住宅供給の問題点を整理する。その上で、我が国の地域の生産体制を見据え、災害の種類・規模に対応して、避難者の人口・世帯属性、敷地の準備、集団移転の有無等を考慮した木造応急仮設住宅供給建設の判断基準を作成する。 2)木造応急仮設住宅の仕様:雲仙普賢岳噴火災害において島原市では、木造応急仮設住宅を短期型災害公営住宅への転用を行った。この際の転用手法を整理する。その上で、我が国の地域の生産体制を見据え、災害の種類・規模に対応して、使用期間、及び移転、転用等の再活用も視野に入れた木造応急仮設住宅の仕様、及び再活用の際の建設(増改築、移築)のため仕様を作成する。 3)制度・立地条件:イタリア、アメリカでの応急仮設住宅供給や復興住宅供給の実態を調査、整理する。また島原、福島における木造応急仮設住宅の移転、転用の実態と合わせ、木造応急仮設住宅を災害公営住宅等へ転用、再活用する際の立地条件等や、必要となる制度上の問題点等を整理する。その上で、様々な災害の種類・規模を想定した、我が国における応急仮設住宅に係わる制度上の問題点を明らかにする。 4)災害時の住宅復興政策のストーリー作成:以上を総括して、今後我が国で起こりうる様々な災害の種類・規模に対応して、避難から、仮設住宅、災害公営住宅や復興住宅の建設にいたる住宅復興政策のストーリーを作成し、それぞれのストーリーにおける木造応急仮設住宅供給(再活用も含む)のあり方を示す。
|