重水素やトリチウムの水素同位体は、核融合炉燃料の原料や医療材料として重要である。さらに福島原発事故に関わる汚染水は、トリチウムの効果的な分離方法が見つからず、今でも汚染水処理の最大の懸案事項となっている。その解決に向け本研究では、再生可能型水素エネルギー社会をモデルにした、水電解と燃料電池を組み合わせた省エネ型水素同位体分離法を研究する。この研究では、燃料電池を使ったエネルギー有効活用技術を利用し、さらに水素同位体分離という別の応用面に着目することで、非常に独創性ある付加価値の高い工業プロセスに着目している。また最終的に汚染水処理に繋がることで、本研究は「自然再生可能型水素エネルギーシステムの確立」と「汚染水の浄化処理」の両面に役立ち、地球を汚さず、きれいにするWクリーンエネルギーシステムとして社会貢献が可能である。汚染水処理のような大規模なクリーンエネルギーシステムを世界に先駆けて運用することは、今後の燃料電池や水電解開発を中心とした、日本が世界をリードするエネルギー産業の育成に大きく寄与する。 本研究では、固体高分子型燃料電池および水電解を使い、燃料(電解)利用率と同位体分離係数との関係を明らかにした。これにより、効率的に重水素を濃縮するための最小電力消費量を見出す知見が得られた。また、プローブ顕微鏡を使うことで、電解中の触媒上に発生するナノバブル観察を行うことができた。この観察結果により、今後、プローブ顕微鏡を使った触媒開発や耐劣化性の向上に繋がることが期待される。
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