研究課題/領域番号 |
17H03581
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
森下 和広 宮崎大学, 医学部, 教授 (80260321)
|
研究分担者 |
尾野 雅哉 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (00270900)
中畑 新吾 宮崎大学, 医学部, 講師 (80437938)
市川 朝永 宮崎大学, 医学部, 助教 (80586230)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | NDRG2 / PRMT5 / HSP90 / PP2A / client protein |
研究実績の概要 |
このプロジェクトはがん抑制遺伝子NDRG2が欠損した成人T細胞白血病(ATL)のNDRG2欠損に依存した機能異常を導き出し、新たな治療法の開発につなげるものである。NDRG2は多くの固形がんでも発現低下が見られるため、ここで同定された治験は白血病のみならず固形がんへの応用が可能である。
NDRG2はPP2Aフォスファターゼの結合タンパク質として、主要な情報伝達経路を負に制御するストレス応答遺伝子の一つである。これまでにNDRG2がPTENやNIKのリン酸化制御を行い、AKTやNF-kB情報伝達系の制御に関わり、その異常がATL発症に重要であることを示してきた。その働きを網羅的に調べるために、NDRG2結合タンパク質を網羅的に検索を行ってきた。その中で新規結合タンパク質としてPRMT5に着目し、その機能解析とATL白血病発症機構の解明をこのプロジェクトでは行っている。このプロジェクトでは、NDRG2発現低下がPRMT5の機能や細胞内局在を変化させ、HSP90機能にPRMT5酵素活性が大きな影響を与えることがわかってきた。従って、NDRG2発現低下を指標として、その枠組みのがん細胞では、その生存にはPRMT5酵素活性に大きく依存しており、その機構を明らかにすることで、新たな治療戦略が拓けてくるものと考えられる。
機能解析と、その研究内容は次のとおりである。(1) NDRG2によるリン酸化調節タンパク質群の網羅的同定と機能解析 (2)癌におけるHSP90Aのタンパク質修飾異常による活性調節機構 (3)NDRG2によるPRMT5の細胞内局在の変動と、その標的に対するメチル化 (4) 各種ストレス下におけるNDRG2欠損マウスの腫瘍発症機構とPRMT5の寄与の証明 (5)既知のメチルトランスフェラーゼ阻害剤、PRMT5阻害剤による新規治療薬の基礎検討
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NDRG2によるリン酸化調節タンパク質群の網羅的同定に関してNDRG2をATL 細胞に導入しLC-MS/MSによりNDRG2結合タンパク質を多数同定した。その中にHSp90AB, HSPA8 HSPA5 PRMT5 MEP50が含まれていた。その結果として、NDRG2とPRMT5/MEP50複合体の結合を確認した。さらに PRMT5発現抑制により細胞増殖抑制、アポトーシス誘導を確認、HSP90依存性の多くの情報伝達タンパク質群の分解が見られプロテアゾーム依存性であることをつかんだ。PRMT5のアルギニンメチル化に依存したHSP90機能異常であることから、PRMT5によるHSP90アルギニンメチル化修飾が機能維持に必須であることがわかった。またPRMT5の細胞内局在変動と、その標的に対するメチル化活性調節の証明ができ細胞質内局在が重要な機能を有することが示唆された。これに加えて各種ストレス下におけるNDRG2欠損マウスの腫瘍発症機構とPRMT5の寄与の証明実験を行なっているが、低酸素状態におけるATL細胞は細胞増殖抑制がより弱いことがわかった。さらにHIFによるNDRG2の発現誘導が低酸素における細胞増殖抑制に必須であり、ストレス状態におけるATL細胞のメリットが確認された。また既知のメチルトランスフェラーゼ阻害剤、PRMT5阻害剤による新規治療薬の基礎検討 EPZ01566ならびにGSK591阻害剤を用いたATL細胞における機能検討を行ったが、ほとんど効果が見られなかった。このような結果からこれまでの解析は、次年度につながる結果が得られており、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) NDRG2によるリン酸化調節タンパク質群の網羅的同定と機能解析:NDRG2発現低下したATL細胞においてPRMT5単独での結合タンパク質を質量分析計を用いて網羅的に同定、ATL細胞におけるPRMT5の機能を網羅的に解析する。(2)癌におけるHSP90Aのタンパク質修飾異常による活性調節機構: HSP90アルギニンメチル化修飾、リン酸化修飾を、(1)のPRMT5免疫沈降質量分析計において検討する。またアルギニンメチル化修飾ソフトウエアを用いてHSP90におけるアルギニンメチル化修飾可能性を含め、それぞれのアルギニンアミノ酸置換による機能解析を行う。さらにはPRMT5のリン酸化部位を含めてその結合、機能について検討する。(3)NDRG2によるPRMT5の細胞内局在の変動と、その標的に対するメチル化活性調節の証明:RMT5のNDRG2/PP2Aによるリン酸化修飾について、質量分析計の結果と文献から数カ所に絞り、かつアミノ酸置換による変異体を導入し、その機能を明らかにす。(4) 各種ストレス下におけるNDRG2欠損マウスの腫瘍発症機構とPRMT5の寄与の証明: NDRG2欠損マウスにおけるTリンパ腫を用いて、PRMT5発現低下による腫瘍形成能を検討する予定であるが、腫瘍形成そのものが以前と比べ低下したため、HBZマウス NOTCH Tgマウスとの配合により実験系を確立する。その腫瘍形成に対してのPRMT5阻害剤の効果を検討する。また腫瘍移植系を用いた検討も考える。(5)既知のメチルトランスフェラーゼ阻害剤、PRMT5阻害剤による新規治療薬の基礎検討: PRMT5阻害剤は新たに2種類開発されており、新規薬剤を用いた検討と、我々もPRMT5/MEP50結合領域を検討し、新しく薬剤開発につなげるため結合ドメインのアミノ酸置換変異体を用いた機能解析を行う。
|