研究課題/領域番号 |
17H03654
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今村 博臣 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (20422545)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分岐鎖アミノ酸 / トランスポーター / ライブイメージング / FRET |
研究実績の概要 |
1.ミトコンドリア内バリン輸送へのグルタミン要求性の発見 ミトコンドリア内に分岐鎖アミノ酸蛍光バイオセンサーを発現させた細胞のイメージングをおこないながら、培地を通常のDMEMからロイシン、イソロイシン、あるいはバリンのみを含む培地へ交換した。その結果、ロイシンやイソロイシンを含む培地に変換した場合はバイオセンサーのFRETシグナルに変化はほとんど見られなかった一方、バリンを含む培地に変換した場合は、FRETシグナルの低下が観察された。興味深いことに、バリンのほかにグルタミンが含まれている場合は、FRETシグナルの低下はほぼ抑制された。すなわち、細胞質からミトコンドリア内へのバリンの輸送にはグルタミンが必要であることが示唆された。 2.ミトコンドリア内膜のバリン輸送体のスクリーニング 上記1の実験結果より、バリン輸送体はロイシンやイソロイシンの輸送体とは異なりグルタミンを要求すると考えられたことから、分岐鎖アミノ酸蛍光バイオセンサーを恒常的にミトコンドリアに発現するHeLa細胞をsiRNAで処理し、バリンのみが含まれている培地とバリンとグルタミンが含まれている培地で、FRETシグナルを比較した。その結果、3種類の遺伝子のsiRNAで有意にFRETシグナルの低下が観察された。このことから、この3種類の遺伝子のいずれかあるいは全てがバリンのミトコンドリア内輸送に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
siRNAライブラリーを用いたスクリーニングにより、当初目標としていた分岐鎖アミノ酸輸送体の候補遺伝子の絞り込みをおこなうことができたため、本研究プロジェクトは概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.輸送体の生化学的解析 RNAiスクリーニングによって同定された輸送体をHEK293細胞で大量発現させる。発現した輸送体をアフィニティークロマトグラフィーによって精製した上でリポソームに組み込む。放射性ラベルしたアミノ酸がリポソームの外から内に取り込まれる活性を指標に、RNAiスクリーニングで得られた輸送体が実際に分岐鎖アミノ酸を輸送するかどうかを確認する。また、分岐鎖アミノ酸以外のアミノ酸についての輸送活性を測定することで、輸送体の基質特異性を明らかにする。 2.輸送体の分子細胞生物学的解析 絞り込まれた輸送体に標識タグを付加して発現させ、タグ抗体を用いた免疫染色によって、その輸送体の細胞内局在を確認する。並行して、蛍光タンパク質と輸送体を融合させて細胞に発現させ、その局在を蛍光顕微鏡で解析する。次に、輸送体の細胞レベルでの機能を調べるため、ゲノム編集によって輸送体遺伝子をノックアウトした細胞を作製し、ミトコンドリア内アミノ酸濃度、呼吸活性、ミトコンドリアの数と形態、細胞内ATP濃度等に与える影響を解析する。
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