1.培地中の栄養素が細胞質およびミトコンドリア内BCAA濃度に与える影響の解析 前年度までに、蛍光BCAAバイオセンサーを用いた解析から、細胞外BCAA濃度と細胞内BCAAが強く相関すること、およびグルタミンが細胞内へのBCAA取り込みを促進することを見出していた。そこで、BCAAおよびグルタミン以外のアミノ酸についても解析をしたところ、多くのアミノ酸が細胞質BCAA濃度を上昇させる効果をもつことが判明した。このことは、細胞外から細胞内へのBCAAの輸送の少なくとも一部は、他のアミノ酸の輸送と共役していることを示唆している。また、このときミトコンドリア内のBCAA濃度は細胞質内BCAA濃度と極めて強く相関していた。他方、中央代謝に関わる栄養素であるグルコースやピルビン酸にも細胞内BCAA濃度を上昇させる作用があることが見いだされた。グルコースやピルビン酸の効果は、細胞膜の主要なBCAA輸送体であるLAT1のノックダウンによって消失したことから、これらの栄養素が何らかの働きでLAT1を介したBCAAの輸送に関与していると考えられた。 2.ミトコンドリアBCAA輸送体の探索 今年度の途中で、米国のグループより褐色脂肪細胞におけるミトコンドリアBCAA輸送体としてSLC25A44を同定したという論文が発表された(Yoneshiro et al. Nature 2019)。一方、我々がHeLa細胞でSLC25A44をノックダウンしたところ、ミトコンドリア内BCAA濃度には大きな変化は見られなかった。このことから、HeLa細胞では、SLC25A44以外の輸送体もBCAA輸送に関与していると予想された。
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