研究課題
(1) アレンインを用いた金触媒連続環化反応の開発:申請者は前年度までの研究において、フェニレン基で連結されたアレンインに対して金触媒を作用させると、興味深い炭素-炭素結合形成反応が進行することを見出していた。今年度は本反応を詳細に検討した結果、アレンインの金触媒を作用させると、立体選択的なシクロプロパン化反応が進行することを明らかにした。さらに、アルキンのオルト位にメチル基を有する基質を用いると、興味深いアセナフテン形成反応が進行することを見出した。(2) 麦角アルカロイド型縮環インドール骨格の一挙構築法の開発:アレンインの環化反応によって生じるビニルカチオンを窒素置換基でトラップすることで、麦角アルカロイド等に存在する三環性インドール骨格を構築する反応の開発を行った。オルト位にアミノ基を有するアレンインに対して金触媒を作用させると、炭素-炭素結合形成反応に引き続いて炭素-窒素結合形成反応が進行し、ナフタレン縮環型ピロール誘導体が生成することを見出した。(3) ディクチオデンドリン類をリードとする創薬研究:前年度までの研究において得られたディクチオデンドリン誘導体の生物活性評価を行った。その結果、簡略化した構造を有するディクチオデンドリン誘導体の一部が天然物と同等以上の細胞増殖抑制活性を示すことを明らかにした。(4) アクアミリンアルカロイドの合成研究:前年度に引き続き、アスピドフィリンAの合成研究を実施した。連続環化反応の検討過程において、合成した環化前駆体がラセミ化していることが判明した。そのため、ラセミ化が進行しない反応条件の検討を行い、環化前駆体の不斉合成経路の確立を行った。引き続き、金触媒連続環化反応の検討を行った結果、酸素官能基型環化前駆体を用いて反応を行うと、目的の立体選択的で連続環化反応が進行することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
アレンインの連続環化反応について、シクロプロパンとアセナフテンを合成する反応開発に成功し、窒素官能基を有する基質の反応開発も順調に進んでいる。ディクチオデンドリン類をリードとする創薬研究については、合成研究が予定通りに進展し、細胞増殖抑制活性試験において期待以上の成果が得られた。アスピドフィリンの合成研究においては、ラセミ化の問題により当初の研究計画に遅れが生じたものの、その後の検討によって問題を完全に解決する合成経路を確立することに成功した。全体として、研究計画は概ね順調に推移していると評価できる。
(1) アレンインを用いた金触媒連続環化反応の開発:新たに見出した反応の条件最適化と一般性の検討を実施し、シクロプロパンおよびアセナフテン形成反応として確立する。さらに、多環式芳香族化合物への合成展開を目指す。(2) 麦角アルカロイド型縮環インドール骨格の一挙構築法の開発:ナフタレン縮環型ピロール誘導体の合成反応の一般性の検討を行い、様々な置換基を有する誘導体の合成を行う。(3) ディクチオデンドリン類をリードとする創薬研究:開発した多様性指向型ディクチオデンドリン合成法を用いて、合成が完了していない天然物の全合成を行う。さらに、得られたディクチオデンドリン誘導体に対して、キナーゼプロファイリング試験を実施し、ピロロカルバゾールの創薬テンプレートとしての有用性を検証する。(4) アクアミリンアルカロイドの合成研究:不斉合成に成功した環化前駆体を用いて、金触媒を用いた立体選択的な環化反応の条件最適化を実施し、引き続いてE環形成について検討を加える。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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