研究課題/領域番号 |
17H03982
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
仁科 博史 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60212122)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞張力 / 肝臓 / MDCK細胞 / Hippo-YAP / FRET |
研究実績の概要 |
肝臓は、内胚葉由来の前腸の特定領域に幹細胞である肝芽細胞が発生し、細胞増殖と分化を経て、一定サイズの三次元(3D)器官に成長する。国内外を通じて、肝サイズや3D構造を制御する分子機構の解明が重要課題となっている。我々は、これら問題を解決する目的で、小型魚類メダカを用いた大規模な肝形成不全変異体のスクリーニングを行った。その結果、“肝臓が小さな緋扇(hiohgi) ”変異体や、“上皮を含む組織が扁平になるヒラメ(hirame) ”変異体が単離された。これら変異体の解析から、肝サイズの制御にレチノイン酸シグナルが重要であること、転写共役因子YAPが細胞張力を介して3D器官形成に必須の役割を果たしていることが明らかになった。また、国外の研究グループは、マウス肝臓でYAPを過剰発現させたり、上流のHippoシグナルを破綻させると、肝細胞は増殖し、肝臓は肥大し、肝細胞がんが発症することを報告した。さらに、我々は、イヌ腎上皮細胞MDCKにYAPを過剰発現させると、隣接細胞に圧力が誘導され、YAP発現細胞が頂端面に押し出されることを見出した。マウス肝臓においては、YAP依存的に障害肝細胞が排除されることを見出した。すなわち、Hippo-YAPシグナルは、細胞増殖や細胞張力などの細胞応答を介して、肝臓のサイズや肝臓の品質を制御することが示唆された。そこで、我々はアクチン結合タンパク質であるActininの特性を有するFRETプローブ(mCherry―クモ糸タンパク質―EGFPを基本構造を含む)を利用することで、物理力の可視化を試みた。その結果、時間依存的にMDCK細胞2細胞間にFRETが誘導されることを見出した。排除される2細胞間に生じる圧力の可能性が示唆された。現在、この真偽を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
YAP依存性の細胞排除現象をin vitroとin vivoで見出し、物理力が関与する実験系を確立したため。
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今後の研究の推進方策 |
見出したin vitroとin vivo実験系を用いて、物理力の可視化を行う。
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