研究課題
平成29年度、平成30年度にはCRISPR-Cas9システムを用いて1コピーの変異HOPX Lys23Asnアレルを有するノックインマウス(C57BL/6NJcl)を樹立した。患者病態を反映した新規心不全モデルマウスを確立し、令和元年度にはそのモデルマウスを用いた病態解析をおこなった。ノックインマウスヘテロ型に対して心臓超音波検査Mモード法を用いて生後9週齢から40週齢にかけて継続的に心臓収縮能を評価したところ、HOPX変異マウスのFS(Fractional Shortening)は生後9週齢時点で既に約45%へと軽度低下しており、36週齢以降の時点では約30-35%への低下をみた (対照群は60%台)。また、左心室内腔も3.0-3.5 mmへと有意に拡大していた (対照群は2.5-3.0 mm)。興味深いことに、変異マウスの4-5割程度には心拡大・心機能低下をほとんどきたさない個体が存在した。同腹子(同胞)においても心拡大・心機能低下をきたす個体とほとんどきたさない個体とが混在することを観察した。なお、生後最長1年2ヶ月齢までの経過を観察し得たが、経過中の心不全死亡を認めなかった。HOPX変異1コピーの遺伝子導入では、HOPX変異過剰発現マウスでみられたような重度の心不全をきたさないことが明らかになった。心機能低下をほとんどきたさない個体が存在する理由は不明であるが、HOPX変異が単独で重症心不全をきたすということではなく、他の原因遺伝子変異ないしは環境要因のgenetic modifierとして作用し心筋症発症を誘導・促進している可能性をも考慮しなくてはならない。HOPX変異がどのような心筋転写制御の異常をもたらすか究明するため、胎仔心筋細胞を採取しsingle-cell RNAシークエンスをおこない現在データ解析中である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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