研究実績の概要 |
本研究では、申請者らが見出したキノン類の高感度な化学発光検出に基づくキノンとその修飾体の解析法を確立し、それらの種類や存在を解明するとともに、そのバイオマーカーとしての可能性を探索する。これまでの検討において、キノンの一種であるメナジオンを投与したラットの血液から、グルタチオン-メナジオン修飾体以外にもキノン修飾体に由来すると考えられるピークがいくつか検出された。そこで、これらのピークがどのような修飾体に由来するかを同定するために、ピーク画分を分取して LC-MS/MS により解析した。しかし、これらの分画中から明確な分子イオンピークを観察することができず、キノン修飾体のイオン化効率が低いと考えられた。そこで、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン等のイオン化効率を改善するための誘導体化試薬を用いての検討を行なったが、結果としてキノン修飾体のピークを同定するまでには至らなかった。次に、1,4-ナフトキノンやプルンバギンといった別のキノンを用いて検討を行なった。血液に1,4-ナフトキノンを添加したところ、いくつかの新しい化合物の生成が確認され、血液成分と1,4-ナフトキノンが反応していると考えられた。しかし、これらの 1,4-ナフトキノン修飾体の安定性は低いと考えられ、実際に1,4-ナフトキノンを投与したラットの血液からは 1,4-ナフトキノン修飾体は検出されなかった。プルンバギンを用いた検討では、プルンバギンはグルタチオンと反応していることが確認されたが、反応によりキノン構造が失われていることが示唆され、化学発光によりプルンバギン修飾体の存在を追跡することは困難であると考えられた。これまでの検討によってキノン類を生体に投与した場合、確実にその修飾体が生成することが化学発光検出によって確認できたが、その本体温解明には高感度な LC-MS/MS 等の導入が必要であると考えられる。
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