研究課題
本科研調査の研究対象遺跡であるコーム・アル=ディバーゥ遺跡では、将来の発掘調査に備えたトレンチ発掘により層堆積を確認する作業を2019年度に開始し、2020年度におけるコロナによる休止期間を挟んで、2021年度にはその継続作業を行いこれを完遂させた。トレンチ発掘は、2.5m四方のグリッドを計12設定し、地表面から無遺物層となるまでの堆積を掘り下げた。観察の所見は、以下の通りである。第Ⅰ層(地表面~-70/-80cm)は、土器片・煉瓦片・炭化物・石膏を含むシルト層で、これが研究対象のヘレニズム後期~ビザンツ文化層に対応すると思われる。第Ⅱ層(-70/-80cm~-210/-230cm)は、シルト層と砂層が混じり、遺跡形成の最初期(末期王朝~ヘレニズム初期か)に対応すると思われる。第Ⅲ層(-210/-230cm~)は無遺物の砂層となり、シルトが大河川の営為で運ばれて人間活動が開始される沖積世時代以前の層堆積になると思われる。当該の層位観察の所見は、2008年以降に10年以上をかけて行ってきたイドゥク湖の古環境復元には極めて重要と思われる。そこでこれらの時間軸に関わる環境変化のモデルを研究報告としてまとめ、遺跡周辺の景観復元研究に応用した。既に2019年にエジプトのマンスーラ大学で行われた国際研究会での発表成果は、2022/7にロンドンから刊行されたが、コーム・アル=ディバーゥ遺跡を中心に据えつつ、その東側のラシード支流沿岸の景観復元や、地中海べりの海岸砂丘の景観復元研究は現在も継続して行われており、その多くは2023年度中の刊行となる予定である。なお、デルタ沼沢地の水辺でのライフスタイル研究の比較考察として、ナイルのほとりの生活文化を研究対象として扱い、古代を通じて行政都市としての役割を果たしたメンフィス地域における水辺環境に関する考察も行われ、これは論文として刊行された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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東日本国際大学紀要『研究東洋』
巻: vol.13 ページ: 81-93