研究課題/領域番号 |
17H04621
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
久世 雅樹 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (40335013)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 寄生植物 / 天然物化学 / フィールド調査 / 分析化学 / 有機化学 / 生体成分 |
研究実績の概要 |
世界の主要穀物であるソルガム(モロコシ)に寄生し収穫量に甚大な被害を及ぼしている雑草「ストライガ」を、除草により防除することを目的とした。①薬草として利用されてきたストライガの薬効成分に着目し、その分析・同定、②ストライガの主要な二次代謝産物には市場価値が見込めるので、その抽出・精製法の確立、③異なる宿主に対するストライガの代謝産物の解析により寄生戦略を化学生態学的に解明、④除草効果の検証という作物学的研究による裏付け、という一連の研究を推進し、ストライガに価値を付与して除草防除の実現を目指す。 (1)昨年度の調査により見出した、首都ハルツーム近郊のソバエリアにある農業試験場でストライガを採取した。昨年度は開花前のストライガを多く集めたので、本年度は開花成熟したストライガを中心に採取した。現地で乾燥粉末にしたのち、共同研究先であるスーダン国立研究所・薬用植物研究所にてソックスレー抽出まで実施した。抽出溶媒として、他の有機溶剤を用いて抽出効率についても検討した。その後の精製を日本で実施した結果、フラボノイド誘導体を複数個構造決定することができた。 ②ストライガの除草効果を実証するフィールド研究 昨年度に引き続き、ARCの実験圃場(ハルツーム)に、ストライガの汚染区を3区、非汚染区を1区用意した。1つ目の区画は基準区として、播種から収穫まで一切ストライガを除草しない。2つ目の区画では、収穫期前に一斉にストライガを除草する。ストライガの被害がソルガムの収穫量にすでに及んでいるものの、翌年度以降のストライガ種子数は減少するので、除草効果が期待できる。3つ目の区画ではソルガムを定期的に除草する。4つめの区画はストライガ非汚染区なのでソルガム収穫量の基準データを集める。この4つの区画を3連すでに用意しており、初年度のデータを集めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 ストライガを安定に入手する場所の確保、特に首都ハルツーム近郊で見つけることが本研究を実施する上で最重要課題であったが、共同研究先であるスーダン国立研究所・薬用植物研究所の全面的協力により確保することができている。その後の乾燥およびソックスレー抽出も現地で実施する体制を確立している。また除草効果の圃場実験整備も完了しており、計画通り研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究先であるスーダン国立研究所・薬用植物研究所の所長であるAwatif教授を中心に研究スタッフと確固たる信頼関係を構築できたことから、共同研究がスムーズに進展しており、引きつづきこの良好な関係を維持しつつ、研究を推進する。昨年10月からはスーダン人国費留学生が研究室メンバーに加わり本研究を推進する強力なメンバーが増え、研究のさらなる推進が期待できる。スーダン国立研究所・薬用植物研究所は薬理効果に関する知識が豊富であることから、寄生植物を漢方薬のように利用する可能性も見つかってきており、今後の展開も期待できる。ストライガに含まれる活性物質に着目した研究展開も視野に入れている。 ごく最近政情不安の傾向が見られるが、本研究を推進する上ではいまのところ問題ないと思われる。
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