研究課題/領域番号 |
17H04698
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
仲田 佳弘 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (80720664)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 能動的接触 / 一体構造空電ハイブリッド直動アクチュエータ / インピーダンス / 物理的インタラクション |
研究実績の概要 |
ロボットが人・物体との安全な物理的インタラクションを行うためには,接触対象の変形方向や硬さの認識が不可欠であり,人が未知対象に対して行う触探索のような機能の実現が重要であると考えられる.この研究課題では,ロボティックアームの先端に粘弾性可変の一体構造空電ハイブリッド直動アクチュエータ搭載し,このアクチュエータを介して能動的接触を行うことで,接触対象の表面の分布インピーダンスを計測・可視化できるスキャンシステムの開発と評価を行う. 本年度は,ロボティックアーム先端に搭載するアクチュエータの研究開発を行った.一体構造空電ハイブリッドアクチュエータは,高出力の空気圧アクチュエータと高応答のリニアモータを組み合わせることで,従来技術では実現困難であった高出力と高応答性を両立する駆動装置である.2つのダイレクトドライブアクチュエータの要素と空間を一体化することで,小型で,外力に対するバックドライバビリティに優れたハイブリッドアクチュエータを実現している.アクチュエータ中の電磁アクチュエータ要素については電磁界シミュレーションによる出力特性の計算を行い,空気の圧力によって生じる力に対して,電磁力が適切な配分となるように構造を決定した.空気圧アクチュエータ要素については,システム全体の小型化を目的に,ピストン,シリンダの封止部,空気の入出力ポート,およびアクチュエータの構造部品の全てを専用部品として設計した.ピストンには摩擦抵抗の小さいパッキンを採用し,構造部材には繊維強化した樹脂を採用することで軽量化を達成した.試作アクチュエータは,空気圧力0.7MPaGにおいて空気漏れが無いことを確認した. 開発した空電ハイブリッドアクチュエータの電磁アクチュエータ要素は3相交流同期モータであるが,さらなる高推力密度化を目的に,磁気送りねじを利用した電磁アクチュエータの検討も行い,成果を学会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一体構造空電ハイブリッドアクチュエータの空気圧アクチュエータ要素には,安定した特性が得られると考えられる既存の空気圧シリンダの要素部品を利用する想定で構造の設計を進めていた.しかし,ロボティックアームの先端にアクチュエータを搭載し,インピーダンススキャンシステムを構成する際,アクチュエータを接続する部分の設計の自由度が小さくなるために,システムの構造全体が大型化することが判明した.そのため,ピストン,シリンダの封止部,空気の入出力ポート,およびアクチュエータの構造部品の全てを一から設計することにした.そのため,これらの部品をアクチュエータに組み込んだ状態での試作検証を行う必要が生じ,結果的にアクチュエータの開発計画が影響を受け,全体としてスケジュールに遅れが生じた.その一方で,専用部品の設計により,本研究の目的であるインピーダンススキャンシステムの開発に対しては,アクチュエータの専用部品の設計・施策により,システムの小型化,組み付けを容易にする構造の実現,配線や空気圧チューブの効率的な取り回しが可能になり,来年度以降の研究を加速させることが期待される成果を残すことができたことから,順調に進展していると評価している.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には,前年度の設計・試作検証結果に基づき,一体構造空電ハイブリッド直動アクチュエータの製作を行う.また,提案するインピーダンススキャンシステムの構成検討と製作を行う.アクチュエータについては,部品の組み立てを行い,実際に給気して空気漏れの確認を行う.そして,空気圧力と電磁気力によるハイブリッド駆動を行い,出力特性を確認する.インピーダンススキャンシステムは,アクチュエータとロボティックアームから構成される.システムの構成要素として,アクチュエータを接続する部品,ロボティックアームを固定する架台,安全対策のためのケージを製作する.システムを駆動するため,圧力制御バルブ,制御用電子基板およびPCとのインタフェース基板を内蔵した制御ボックスを製作し,リアルタイムOSをインストールしたPCからの指令で動作させる.制御プログラムの開発を進め,物体との接触時に,アクチュエータ先端において一定の押しつけ力を維持できることを確認する.
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