近年、開発途上国において、携帯電話やSocial Networking Service (SNS)といったデジタル技術が急速に広がりつつある。開発の分野では、農業生産者とトレーダーの間における情報格差の問題への対応策として、デジタル技術への注目が高まる一方、その効果は限定的である。また、SNSは途上国において新たな情報共有媒体として定着しつつあるが、開発の文脈においてSNSを活用した実証研究は認められない。本研究の目的は、SNSを用いて農畜産物の市場価格を提供した際、情報格差の是正や所得向上効果が確認されるのか、社会実験を行うことで明らかにすることである。その際、デジタル技術の恩恵が限定的な要因として、デジタル技術に精通した農家世帯における若年層が活用されていないという仮説を立て、実験を通して仮説の検証を行う。 当該期間において、実験対象地において社会実験を実施し、データの収集を行った。 具体的には、研究地対象地であるエチオピアにおいて、ランダムに選択された農家世帯に対して、スマートフォンを提供し、SNSの一種であるFacebookの非公開グループへの招待を行った。非公開グループでは、主要な市場で集められた農産物(大麦、小麦、豆類)の市場価格に関する情報の提供を行った。 また、収穫後の農産物販売価格に関する情報を集めるため、電話を用いた調査を行った。基本的に、2週間に一度、全対象者に対して電話調査を実施、農産物の販売の有無、販売が確認された際には売値についての情報を収集した。
|