現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り、H29年度は、まずNon-BO計算の出発関数としてBO近似での電子状態の波動関数を求める計算を行った。最も基礎的なH2分子では、電子基底状態と様々な電子励起状態(Σ,Π,Δ,Φ状態)のBO近似のポテンシャルカーブを結合領域から解離まで精密に求めることができた。特にΦ状態は文献に報告がなく、本研究で初めて精密計算の結果を示すことができた。また、C2分子の電子基底・励起状態のBO近似のポテンシャルカーブの計算では、その電子基底状態の解離はC原子の3重項(s2p2)だが平衡位置ではC原子の5重項(sp3)から構成される4重結合配置が重要となる。Non-BO計算でもこの電子状態の本質は変わらないため、ここで得たBO近似の波動関数をそのままNon-BO計算の出発関数として用いることで、結合状態から解離状態までの様々な電子・振動・回転レベルを計算することができると考えられる。このように、Non-BO計算の初期関数を得るBO近似の解を求める手法はほぼ確立し、今後の本格的なNon-BO計算に向けて準備が整えられた。 また、Non-BO計算を実行する計算アルゴリズムとして、サンプリング法(LSE法)を利用するアルゴリズム・プログラム開発を進めた。これを、簡単なH2分子(及びその同位体分子: HD, D2等), HeH+, LiH分子などに応用し、電子基底状態だけでなく電子励起状態に対応する解を求めた。電子励起状態に対応する精密なNon-BO計算は文献にほとんど報告がなく、本研究で初めてその結果を示した。 このように、ほぼ当初の計画通り研究が展開されたため、(2)おおむね順調に進展している、と自己評価した。
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