研究実績の概要 |
2018年度においては、排ガス浄化反応系に着目し、その中の重要な反応であるNO-CO反応に対し、既に高いN2選択性を示すことが判明しているPdIn金属間化合物触媒のInを一部第三金属で置換したPd(In1-xMx)(M = Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga)の触媒性能を検討した。その結果、M = Cuとした場合にN2選択性を低下することなく、NO転化率が劇的に向上することが判明した。また、EXAFS、STEM-EDS、CO吸着FT-IRを用いた多角的なキャラクタリゼーションにより、ハイブリッドアロイ構造を有する合金ナノ粒子が実際に構築されていることを実証した。 一方で、その他の金属で置換した場合には活性向上は見られず、本現象はCu置換において特異的に見られることが分かった。さらにCu置換量を変化させ最適化した結果、x = 0.67の場合に最も高い活性が得られることが判明した。また反応条件を最適化した結果、200℃の低温条件下において、NO転化率100%、N2選択率100%を達成した。これは金属触媒を用いて達成された世界初の例である。 さらに、詳細な反応機構解析やDFT計算を用いた検討から、触媒性能向上に対するInおよびCuの効果を原子レベル、素過程レベルで明らかにした。本結果は化学分野におけるトップジャーナルに論文として掲載され(Chemical Science, 2019, 10, 4148-4162)、掲載号のバックカバーにも選定された。 またこれらに加え、当初の研究計画で予定していたPd3Pb上でのアミン酸化によるイミン合成の系に対し、Pdの一部を種々の金属に置換したハイブリッドアロイ触媒を用いて触媒探索を行った。その結果、Pdの一部をAuに置換した(Pd0.5Au0.5)3Pbを用いた場合に、触媒活性が大幅に向上することを見出した。
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