研究課題/領域番号 |
17H05098
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
古目谷 暢 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (60721082)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 男性不妊 / 精子形成 / マイクロ流体システム |
研究実績の概要 |
(1) 精細管シートデバイスにより精細管構造を疑似的に再現し精子形成を実現する 先行研究によりデバイス内でセルトリ細胞をシート状に配列することに成功しているため、今年度はセルトリ細胞が成熟するための培養条件を検討した。これによって、アンドロゲン受容体の発現や、血液精巣関門(BTB)の形成といったセルトリ細胞の成熟を促すために最適な播種細胞の密度、細胞外基質の種類、培養液の組成を同定した。また、内腔側に生殖細胞を追加し、生殖細胞が生着・自己増殖し、精子形成が進展する条件も検討しているが、生殖細胞の維持すら困難な状況である。そこで、MEFやJK1といったフィーダー細胞シートをセルトリ細胞シートと重ねる3次元培養も試みている。 (2) 精細管誘導デバイスで管腔形成過程を制御し精細管構造を再現し、精子形成を実現する 酵素処理して得た精巣構成細胞を静置培養で凝集させ、組織培養用のマイクロ流体デバイスで培養した先行研究では、精細管の誘導を制御できず、精子形成のさらなる進展は認めなかった。そこで精細管誘導デバイスで凝集前の構成細胞懸濁液を培養し、効率的な精細管誘導に取り組む方針である。その前段階として、懸濁液に追加する細胞外基質の種類、培養液の組成の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1) 精細管シートデバイスにより精細管構造を疑似的に再現し精子形成を実現する セルトリ細胞の成熟化に関する進捗は想定通りだが、当初計画と異なり精細管シートデバイスでの精子形成の進展は実現していない。このため平成30年度以降の計画のうちマウス成体を用いた検討を前倒し、並行して検討している。 (2) 精細管誘導デバイスで管腔形成過程を制御し精細管構造を再現し、精子形成を実現する 精細管誘導デバイスで凝集前の構成細胞懸濁液を培養し、効率的な精細管誘導に取り組む予定であったが、最適な細胞外器質の検討に時間を要し、計画が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 精細管シートデバイスにより精細管構造を疑似的に再現し精子形成を実現する 精細管シートデバイスでの精子形成を実現させるうえで、生体内におけるセルトリ細胞の機能を発現させることが重要と考えられる。そこで、精子形成を開始した時期の生体内におけるセルトリ細胞と、同時期まで培養したセルトリ細胞の遺伝子発現をRNA seqで解析を行った。ここから得られた情報を基に精子形成の実現が可能な真に成熟したセルトリ細胞の誘導を試みていく。 (2) 精細管誘導デバイスで管腔形成過程を制御し精細管構造を再現し、精子形成を実現する 3次元培養の多くで用いられる細胞外器質の検討に時間を要しており、精細管誘導デバイスでの精細管誘導の十分な検討が行われていない。このため細胞培養の代わりに実績のある精巣組織培養で精細管誘導デバイスの濃度勾配形成を評価し、デバイスの形状を最適化していく。この際に細胞培養スペースに収まるように微小精巣組織片を用いることで、3次元培養の条件が確立され次第、細胞培養下での精細管誘導デバイスの運用を開始できる体制を整備する。
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