研究課題/領域番号 |
17H05101
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石川 桂二郎 九州大学, 大学病院, 助教 (00795304)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 線維化 / 網膜 |
研究実績の概要 |
① 加齢黄斑変性における抗血管新生増殖因子(VEGF)療法後の線維増殖の予測マーカーの同定 滲出型加齢黄斑変性(AMD)の治療前OCTにおける網膜色素上皮層(RPE)の障害範囲とアフリベルセプト硝子体内投与後の網膜下線維化(SRF)との関連を検討することを目的とした。 光干渉断層計(OCT)でRPEを評価可能であった加齢黄斑変性患者を対象に、治療開始前のOCTで、脈絡膜新生血管病変の最大径を縦、横でスキャンした画像を用いて、健常部RPE層が途絶している範囲の長さを計測し、縦横の平均値をRPE障害範囲と規定。治療開始6ヶ月後の眼底写真、OCTの所見に基づいてSRFを認めた症例をSRF群、それ以外を非SRF群と分類した。治療前RPE障害なし群と部分障害群では、全例で治療開始6ヶ月後にSRFを認めなかった一方で、広範囲障害群の78%(18眼)でSRFを認めた。 治療前OCTにおける広範なRPE障害が、IVA治療後にきたすSRFの予測マーカーとして有用であり、現在開発中の抗線維化薬剤の適応指標となる可能性がある。 ②ウサギ増殖硝子体網膜症モデルにおける線維増殖抑制薬徐放剤の効能と薬物動態 網膜色素上皮の上皮間葉転換を抑制可能な薬剤を、徐放化することに成功し、動物モデルに投与を行い、薬剤の効果と持続性を少ない数の検討であるが確認することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網膜色素上皮細胞の上皮間葉転換を強力に抑制可能な化合物を同定し、その効果をin vitro実験で確認した。また、ドラッグデリバリーを用いて徐放化製剤の作成に成功し、in vitroでの徐放効果、線維化抑制効果の持続性を確認することができた。ウサギ増殖硝子体網膜症モデルを用いての薬物動態、薬効の実験にスムーズに移行できており、ほぼ予定通りに実験を遂行できている。 臨床研究においては、加齢黄斑変性の線維化予測マーカーの同定を試み、治療前の光干渉断層計(OCT)における網膜色素上皮層の障害範囲が広い症例では、高率に治療後に線維化をきたす傾向があることを見いだした。これにより、現在開発中の薬剤が臨床応用された際の適応基準として治療前OCTが有用であることを報告した。
|
今後の研究の推進方策 |
ウサギ増殖硝子体網膜症モデルを作成し、ステージの進行が確認した時点で、コントロール群、薬剤群、徐放化薬剤群に分けて硝子体内注射を行い、増殖硝子体網膜症の進行をモニタリングする。また、同時に前房水を採取し薬物濃度を測定し、徐放化が得られているかを検討する。 徐放化と薬効の持続性が確認されたら、加齢黄斑変性の線維化への薬効薬理効果をマウスレーザーCNVモデルを用いて検討する。徐放化した薬剤の特許申請については、現在行っている実験結果を基に申請するため準備中である。
|