研究課題/領域番号 |
17H06131
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
手嶋 政廣 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (40197778)
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研究分担者 |
窪 秀利 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40300868)
山本 常夏 甲南大学, 理工学部, 教授 (40454722)
井岡 邦仁 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (80402759)
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研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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キーワード | ガンマ線 / 宇宙線 / ブラックホール / 暗黒物質 / ガンマ線バースト |
研究実績の概要 |
高エネルギーガンマ線による宇宙の研究は、過去15年にわたり、現在稼働中のチェレンコフ望遠鏡により大きく進展した。さらに、世界で唯一となる次世代の高性能チェレンコフ望遠鏡CTAの建設により、この研究分野を飛躍的に発展することを目的とする。我々日本グループは、CTA北サイトであるスペイン・ラパルマに23m口径大口径望遠鏡4基を国際協力により建設している。本研究計画では、これら4基の大口径望遠鏡アレイ建設を完了し、 CTA建設の初期段階から可能な限り多くの科学成果を生み出す。研究目的は、1)地上からのガンマ線バースト観測、2) 超大質量ブラックホールでの高エネルギー現象の解明、3) 銀河中心、矮小楕円銀河での暗黒物質の高感度な探索である。 スペインス・ラパルマに 23m の大口径チェレンコフ望遠鏡4基からなるアレイを建設し、世界最高感度で高エネルギー宇宙ガンマ線観測をすすめる。1号基の建設は建設承認の遅れで、1年遅延することになったが、2018年10月には建設を完了し、現在コミッショニングをすすめている。また、2-4号基望遠鏡は、その構造体が入札中であり、これから本格的な工事がはじまる。日本担当の2-4号基の望遠鏡エレメント(分割鏡、光センサー、読出し回路、電源システム)はすべて製造、輸送を完了し、設置を待つのみである。 2019年1月には、15年間稼働してきた MAGIC 望遠鏡により、ガンマ線バーストの初観測に成功した(GRB190114C)。このガンマ線バースト観測の成功は z=0.42 と近傍であり、EBLによる吸収が比較的少なかったことが大きな理由としてあげられる。このバーストからのガンマ線はTeV領域を超える高エネルギーまで伸びており、我々の予測に一致するものであった。より高感度なCTA大口径望遠鏡では、より多くのガンマ線バーストが観測、研究されると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
MAGIC望遠鏡によりガンマ線バーストの地上からの初観測に成功し、地上チェレンコフ望遠鏡によるガンマ線バースト観測に先鞭をつけることができた。この観測成功は15年間の観測にもとづくものであり、きわめて好条件下でおこなわれた観測である。また、非常に貴重な観測であり、この観測例は次世代のCTA大口径望遠鏡での観測指針をはっきり示すものであった。従来からの我々の予測が正しく、低いエネルギー閾値、高速フォロアップ観測が重要な技術要素であることを示した。この観測により、CTA大口径望遠鏡で年間数例以上の観測が期待される。 また、IceCubeが活動銀河核 TXS0506+056 方向よりPeVニュートリノを観測し、その後10日間にかけて TeV ガンマ線のフレアーを MAGIC で観測し、PeVニュートリノとTeVガンマ線との相関を強く示唆する結果を得た。この観測は、銀河系外起源の超高エネルギー宇宙線起源の研究に重要な方向性を示す。新たなマルチメッセンジャー天文学、突発天体天文学へと道を開くことになった。 CTA大口径チェレンコフ望遠鏡4基の建設も順調に進んでおり、完成した1号基のコミッショニングを進めており、当初の設計仕様を満たしていることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
予定どおり以下のように研究をすすめる。 1) 4基の23m 口径チェレンコフ望遠鏡からなるアレイの建設を計画通り順次進める。既に完成した大口径チェレンコフ望遠鏡1号基と MAGIC とを連動し、相互較正、ステレオ観測を行い、大口径チェレンコフ望遠鏡の性能評価を行う。建設、コミッショニングの完了した望遠鏡から順次科学観測モードに投入していく。 2) MAGIC望遠鏡、大口径望遠鏡を連動し、ガンマ線バースト、パルサー観測、遠方活動銀河核の観測を進める。また、銀河中心領域、矮小楕円銀河の深い観測を行い、暗黒物質の対消滅からのガンマ線放射の探索を行う。 3)他の天文台と協力して、マルチメッセンジャー・突発天体天文学へ向け、そのネットワークの構築を進める。
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