研究課題/領域番号 |
17H06248
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
潮 秀樹 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50251682)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
キーワード | 甲殻類 / 節足動物 / アレルギー / 炎症 |
研究実績の概要 |
甲殻類アレルギーの発症機構を明らかにするために,マウスモデルを作成した.すなわち,マウスの背側を剃毛し,ドデシル硫酸ナトリウム水溶液で皮膚を脆弱化して,クルマエビ・トロポミオシンによる経皮感作を実施した.その後アレルゲンの経口投与を行ったところ,急激な体温低下が生じ,アナフィラキシーを観測した.これによって,トロポミオシンアレルギーモデルの作成に成功したものと判断した.経皮感作時にヘモシアニンを同時塗布すると,アナフィラキシーが生じやすくなる傾向を見出した.このことから,ヘモシアニンがアレルギー発症を増悪する可能性が示唆された. ヘモシアニンなどのアレルギー増悪作用の機構解明のために,ランダムペプチドライブラリー/ファージディスプレイ法を用いて,ヒトTHP-1細胞表面に結合するペプチドを網羅的に探索したところ,49種のペプチド配列が得られ,そのうち3つのペプチドにTHP-1の炎症反応を惹起させる活性を見出した.それらの配列は,甲殻類ヘモシアニンや微生物由来のタンパク質のアミノ酸配列に一部相同的であった.これらの結果から,アレルゲンによる経皮感作時に,微生物や節足動物由来の炎症誘発性成分が存在することによって,経皮感作が促進され,アレルギー発症を誘起する可能性が示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた,アレルギーモデルの作出,ヘモシアニンによる感作誘起作用の観察,ランダムペプチドライブラリーによる炎症誘発作用の確認など,順調に成果が出ている.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,アレルギー発症を誘起する経皮感作時の処理(実用的には調理時)による甲殻類アレルギー発症予防法の確立を目指す.すなわち,ガンマオリザノール,各種ポリフェノール,クルクミンなどをアレルゲンと同時に塗布し,全身性アナフィラキシーの発症を引き起こすアレルゲン投与量に及ぼす影響を明らかにする.また,これらの食品由来炎症抑制成分(ほとんどが脂溶性)を含む食用油とのエマルションを作製し,同様にしてその効果を明らかにする.
|