研究課題
小児特発性ネフローゼ症候群の発症機序には、腎糸球体上皮細胞へ作用する血漿中に存在する単一あるいは複数の循環液性因子が関与することが想定されている。一方で、TまたはBリンパ球、あるいはその両者が疾患の発症に関与することを示唆する報告がなされているが、特発性ネフローゼ症候群の発症機序の詳細は明らかになっていない。本研究は、リンパ球を含む患者末梢血球のいずれかより循環液性因子が産生され腎糸球体上皮細胞に作用することが本疾患の発症要因になるとの仮説をたて、特発性ネフローゼ症候群患者末梢血の表面抗原を用いた血球分画をフローサイトメトリーを用いて解析することで、発症機序と循環液性因子の同定を目的としている。H29年度は、患者検体の提供に関する同意書の準備とコントロールサンプルを用いたFACS表面抗原分析を実施した。またマウス培養糸球体上皮細胞(培養ポドサイト)を入手し、細胞特異的なタンパク質の発現がみられていることを確認した。実際の患者検体の入手に向けた準備段階で、当該施設における対象となりえる症例の数が極端に少ないことを初めとする複数要因の障壁があり、計画通りに患者検体を解析するに至っていない。現在、遅れを取り戻すべく多施設での臨床研究に向けた計画を立て、実施していくところである。
3: やや遅れている
1)特発性ネフローゼ症候群の患者血球の表面抗原分析に使用予定のFACS機器を用いて、コントロールサンプルの解析を実施していますが、研究対象と想定している患者数が想定より少なく検体を得ることが困難となっています。2)入手した培養マウスポドサイトはポドサイト特異的なNphs2やZO-1蛋白の発現が確認しました。これらを用いた解析の準備をすすめているが、対象とする症例範囲や施設を増やす必要があると考えています。また当初予定していなかった申請者の所属機関の移動に伴い環境再整備が必要になった点も研究遂行遅延の理由の一つであります。
初発の小児特発性ネフローゼ症候群を本研究の解析対象と想定していましたが、検体収集に難渋していることから、同疾患でも様々な状況の患者を対象範囲に広げてこの解析を進めるよう計画を修正していく方針です。またそのためには、短施設から多施設での研究協力を募り、検体収集の効率が上げより意義のある解析を進めたいと考えその準備を進めています。
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Scientific Reports
巻: 8 ページ: 2351
10.1038/s41598-018-20731-4.