東京医科歯科大学では特発性ネフローゼ症候群を引き起こす液性因子を解明する目的で、2名特発性頻回再発型ネフローゼ症候群患者において、再発中の血球表面抗原分析を行った。疾患特異的表面抗原パターンの同定には解析数の蓄積が必要である。いずれの症例も免疫抑制剤の内服下であり、治療前の患者血球を含め、症例を増やして解析する必要があり、今後も研究を継続していく。 他方、東海大学では前年に行ったマウス培養ポドサイトの研究に加え、胎児マウスの前腎由来の腎臓オルガノイド作成を進めた。In vivoの腎臓糸球体において、ポドサイト特異的に発現しているNephrinやSynaptopodinは、培養ポドサイトでは発現が弱く、培養上清に患者血球を加えた際の発現変化の検討には向いていないことが明らかとなった。これに代わる検討材料として有効と考えられたものは、マウス腎臓オルガノイドである。オルガノイドは未分化な状況から増殖因子を加えて腎臓を促した細胞塊である。この腎オルガノイドでは糸球体状構造や蛍光抗体染色によるSynaptopodinやNephrin、WT1等の発現を確認することができた。またLTLを発現する尿細管構造を確認した。今後のポドサイト障害の検討に有用であることが示された。今後、さらにヒト検体数を増やし、ポドサイト障害を引き起こすネフローゼ症候群の発症因子の解明に向けた検討に有効である可能性が明らかになった。 ヒト化マウスに対するヒト血液検体を投与する実験については、投与前に検体を無菌状態にする方法が障壁となり、計画の見直しを迫られた。
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